エピローグ

200

 ――四月……。


「類、行くぞ」


「はい」


 beautiful line主催、ヘアメイク&ファッションショー。ショーはネットで生配信される。


 私はみんなに見送られ、ステージに向かう。鼓動を打ち消すように、コツコツとハイヒールの音が響く。


 ステージ裏では、たくさんの女性の人垣が出来ていた。


 その中央に立っていたのは……。


「波瑠さん……」


「類、蓮さん」


 広島、beautiful loungeの三上波瑠。隣にいるモデルの女性はスレンダーで美しい。


 三上は人垣を掻き分けるように、私達に近付いた。


「蓮さんお久しぶりです。類、元気そうだね」


「波瑠さんのご活躍は噂で聞いています」


 久しぶりに逢う三上、瞳はキラキラと輝きますます美男になった。


「蓮さん、負けませんよ」


「俺も手加減はしないよ」


「俺がグランプリを獲ったら、類を奪いに行きます」


 私を……


 奪いに……!?


 私は赤いガウンを纏ったまま、驚きのあまり目を見開いたまま三上を見つめた。


 去年、三上に言われた言葉が鼓膜に甦る。


 ――『類を迎えに行くよ』


「波瑠、諦めな。グランプリは俺達だ。類はお前に渡さねぇよ」


 三上は香坂の言葉に口元を緩め、優しい眼差しを私に向けた。以前は同じ職場で働く仲間。でも今は良きライバルだ。


「類、スタンバイだ」


「はい」


 香坂に声を掛けられ、ステージに一歩ずつ進む。ショーにモデルとして参加するのは、今回で二度目だ。


 それなのに、心臓が破裂するくらい緊張している。


 私達のあとにbeautiful loungeの三上とモデルも続いた。


 ステージの上で、共にスポットライトに照らされた私達。


 その眩い光が……

 未来に続く道標に思えた。


 夢は果てしなく遠い。


 でもその夢に向かって、私達は突き進む。


「類、今を存分に楽しめ」


 ワクワクするような胸の高鳴り……。


 あなたの指先に魅せられて、私は可憐な女にも、妖艶な女にも変わる。


 美しい羽を広げ……。

 眩い太陽の下を羽ばたく蝶のように。


 私は光り輝くランウェイで……

 華麗に舞う。


 夢の一歩を……

 踏み出すように。

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