壊れた空

 学校からの帰り、佐藤さんと清水が玄関にいた。

 外は天気雨が降っていた。二人はそれぞれ折り畳み傘を開いて歩いていった。

 僕は傘を持っていなかった。隣にいた遠藤が「私この前傘を忘れて帰ったから、学校に置いてあるんだよね」と言って、僕に傘を渡した。

 相合傘しろってことか

 僕らが歩いていく先の空は済んだ青色をしていた。雨粒は光を反射して白く輝いて見えた。

 いつか妄想したガラスみたいだ、と思った

 青空に散る雨粒は目の前を歩く佐藤さんと清水を彩っていた。僕の隣にいるのは遠藤で、皮肉なことに僕は彼女を傘で守っていた。

 僕は全てどうでもよくなって投げ出したくなる気持ちと、数奇な運命をむしろ楽しむ気持ちの、相反する二つを抱えて歩いた。

 どうせあと少しで大学生になって全てがリセットされるのだ、とふと思いついた。それならここは踊り場だ

 理想と現実のどちらにもいけない僕は、刹那的な青い空ときらめく雨を背景にして、酔狂なダンスを踊っている

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みすかしあいしたい @TearsThatAreBlue

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