希死念慮のある人にとってはリアルに感じられる物語かもしれません。自殺配信のようなショッキングな出来事を「やばい」という言葉でコンテンツ消費するのが普通の人間ですが、常に死ぬことを考えてしまう種類の人間としては、その自殺した人自体に感情移入してしまう。当事者意識をもって見てしまうので、その死のあまりの凄惨さに、自らの死をためらってしまう。
実は「小さくて大きな一歩」を踏み出せる人というのは、ある意味共感力(ここで言う共感力とは、イマココではないことを想像して、どれだけそれを現実的に受け止められるか、という能力を指します)の低い人なのかもしれませんね。自分が自殺を遂行したら、自分にどんな痛みが待っているのか、という想像を振り切ってしまえる何かがあるのでしょう。「小さくて大きな一歩」を踏み出そうとして踏み出せない人は、今日もその「何か」の正体を探してさまよう訳ですが……。
レビューの趣旨とはだいぶズレてしまいましたが、そんなふうに様々な想像を膨らませるに耐える良作です。