絶対嫌悪のような存在でも、常に脳裏に支配され
深層心理にまで根深く刻まれて行く。
少年は聡明で読書が好きだった。
繊細な外見は、可視出来る傷を、躰に刻んで。
相合傘を提案されたら、少女はそれを受け容れる?
それを頑なに拒んで、雨の中を、独り走り続ける?
少年少女の不思議なバランス感覚……
認め合ったり、いがみ合ったり、見ていて全く飽きない人間模様。
白昼夢のまどろみの情景描写が美しかった。
色を巧みにちりばめて、現実から乖離された夢想の中に溶けて行く。
少年はマコト、少女はマイと言う名前。
ここにも因果があり、運命を感じ合う二人。
少女の苗字はその土地にまつわる
高貴で伝統的な字面「ちしゃのき」
一度確認したら忘れない、インパクト大の漢字三文字。
拝読した22のエピソードだけでは判らないこともある。
しかし、作者が築き上げた人間像や心象風景は
見事な程に、鮮やかだった。続きが楽しみである。