この話の魅力はまるで英語の論説文を読んでいるかのようなリニアなストラクチャにあります。赤のアンダーラインを引いた晴香と、水色のアンダーラインを引いた未唯との対比は、漢文の対句じみた美しさもあります。この計算された筆者の書きぶりが、主人公の“長大なジグソーパズルの、最後の一ピースが埋められた”という語りを説得力のあるものにしています。
ところで、人生というのは不確定なものです。それゆえに、ここまで対比的な構造になるというのは不自然であり、色々と考えさせられるものがあります。――本当にそれはジグゾーパズルだったのか? 本当は晴香が嫌い・未唯が好き、という利己的な判断に基づいて、「完成絵」を主人公自身が先に描いていただけではないのか? 私はこの『一本のアンダーライン』を読んで、そんなことを考えてしまいました。主人公がなんの疑いもなくそれをジグゾーパズルと言い切ってしまうところに、人間の無邪気さ、傲慢さなどを感じてしまうのです。