第84話
誰でもよかった。教授には申し訳ないけれど。彼は今とても辛そうである。
宝探しにはどうしても人造人間の存在が必要だった。永遠の人生からすれば、瞬きみたいな一瞬だけれども、その短い生涯の中に、欲張りな
この状況は仮想現実で過去に生き体験するのとはまったく違う――ただ仮想現実のほうが遙かに現実には近いのだろうけれど――寸分違わぬ遺伝子を持つオリジナルの存在を、
「桃じゃ! これは桃じゃっ!」
「うるさぃっ! やり過ぎて爺がオーバーヒートしてるじゃないか! 鳥頭!」
「心外ですね~テルル。量子コンピュータにそんなミスはない」
青い鳥は『木の上からそそのかすモノ』として、教授に必要な情報を雨のように、シャワーが如く、繰り返し注いでいる。
彼は、彼とはこの場合は教授のことであるけれども、彼は、彼
「しかし私の計算ではどうしようもないアル中のPちゃんが、こんな物を作っていたとは、驚き、桃の木、山椒の木」
「桃の木? そうなのじゃ。これは桃なのじゃっ!」
「ブルーバードっ! レディーをひっくり返し辱めるなんて焼き鳥にするわよっ!」
「
「うるへ。おまえなんかと一緒に育った覚えは……ぎゃぁ~!!! 後ろからセレンちゃんに頭をぐりぐりぐりぐりされてるぅ~。セレンちゃんっ! この場合、本体を攻撃するのは反則よぉ!!! わかったわよ。このテントウ虫あげるわよ! だから頭をぐりぐりしないで~~」
「そうこれは桃なのじゃっ! 余りの不評で落ち込んでいたが
なにか色々と交通渋滞を起こしている……母にテントウ虫の存在がばれていたとは想定外だったが、プレゼントに欲しいと言うくらいだから問題ないだろう。あくまでやらなければならい目的は、―
リアリストなら部族の勢力が強い北部を避けた歴史ある一般の市街地か?
はたまたロマンチストで、二万年ほど遡った古代人からの置き手紙。遺跡の下?
カスピ海の石油パイプラインの底。だとしたら機材があっても厳しいな。
まさかの紛争地帯? 隔絶された孤島? 核施設?
インディ・ジョーンズⅡのように洞窟で邪教集団に祭られてたりして……
「なぜリビドー
しらんがな。精神の錯乱状態と混沌で、やはり教授は辛そうである。例えるならば女装した自分自身を男装した自分自身が抱きしめるみたいな感覚だろうか?
「テントウ虫はレディーバードとの別名もある。ブルーバードとレディーバード……もはや兄妹のような関係と言っていいでしょう」
「うるさいっ! 腹部を覗くな! 嫌らしいっ! ビームで焼き鳥にしてやるっ!」
やれやれ
滞在中にパーティーは全滅だ。永遠の命もあったもんじゃない。
「本当にこんなんで大丈夫なのかい?」猫が俺の肩に飛び乗り、耳元で囁く。
ピンクタワーの内部に家を建てただけの空間は描写するのも空しい。殺風景な同じ景観の中を猫を肩に乗っけたまま少し移動する。右耳から卵のピアスを外し、そっとそれを巾着袋に落とす。
「機材の手配でおばさんが忙しくなるのはまだ先になりそうです。ですが……破壊の命令は下ったけれど、その事実は歴史には刻まれてはいない。隠されているなら必ず見つける」猫の頭をなでるとゴロゴロと喉を鳴らす。
そう。探し出してやる。その為にこのアゼルバイジャンの地を選んだ。
そして。マザーAIは人類の理想像として彼を選んだ。
自分を設計した―
そんな
かく言う俺は尚、それよりまだ生きてもいないのだけれど……だからこそわかる。
非力な存在を合理化する試みを彼が行っていたのならば、人間の弱さを知っているのならば、ピストルでバーンと脳天を打ち抜く前に、なにか考えるはずではないか。
俺と同じようにそこにリビドーが存在していたならば、心に反逆のレジスタンスが眠っていたのならば、透明人間であるはずがないっ!
人は
ピーチフル! ~永久凍土で春を待つ人々~ プリンぽん @kurumasan
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