第83話 裏アカウント⑬

§果樹農園を営む父と小学校教員の母との間に、長男として産まれる。


親とな そもそも親より出流いづるとはどんな心持ちか

父親など遠因でしかない 固いのか柔らかいのか

母親の存在は試験管を想像すればよいのだろうか


わしは試験管から産まれた. それは7.そうあっても7.ね~7. だからこそ7.

7.7.7.7.7.7.7.7.7.7.7.7.7.7.7.7777777777777777777777777777777777 



§極東の漁師町で育つ。なので、好物は魚なのだとエッセイで語っている。

§幼児期は、アンバー(琥珀色)の瞳を随分とからかわれたようであった。

§酷く内気で泣き虫であった。小柄。身長が極度に伸びたのは後々である。



魚魚魚 魚を食べると頭が良くなる……わしには今さら手遅れじゃが

はて? 肉体のパーツの違いにどれほどの差がある? 意味不明じゃ



§数学オリンピックの小学生の部で優秀な成績を収め地方紙に載る。

§大震災に遭い、父と母と祖母が死亡する。一瞬にして家族を失う。

§母方の叔父夫婦に引き取られる。首都移住。極端に写真が少ない。



喪失感? 最初から無いものを失うことについての想起は非常に難しい



§大学までの一貫教育で知られる名門中学に入学。新しい家族とは、円満。

§当時、友達は一人もいなかったとマスコミのインタビューに答えている。

§叔父の影響でギターにのめり込む。大人ばかりのバンドで演奏していた。



DNAのなんたる不思議

わしの特技もギターンなのだ。終わり~な~き~ジャラーン

Hand(その手に) some(いくつかの)

一流とは特技を隠し持つ、だ~か~ら~Handsome(ハンサム)なのじゃ

What a wonderful instrument a guitar is!(ギターはなんて素晴らしい楽器でしょう)



§疫病が蔓延し、世界情勢が不安定になる。戦争が勃発。

§叔父の勧めでトルコ共和国に海外留学。当時、十六才。



ふ~む、丁度その頃、(トルコがテクノロジーの新リーダーとして台頭していた。

急速な経済成長を続け、国民の半数が30歳以下、大学卒業率はイタリアを上回り、同国はイノベーション技術革新の発信源、投資の標的になりつつあった)か、慧眼じゃな……お~い、ブルーバードよ! 叔父の存在が大きいのに何者なのか資料が……ない? 



§KoçÜniversitesi(コチ大学)在学中に、―nənəナナの概念を発表。

§国策としてトルコ共和国の全面支援が決定。身柄を拘束される。

§報道によりその容姿の美しさから世界中にファンクラブが発足。



大層な話ではない、端的に言えば、思わずシンギュラしちゃったうっふん♪ 

シンギュラリティとは(人工知能が人類の知能を超える技術的特異点)

コップの水が溢れるように、いづれ起こる必然が起こった、それだけのこと



§トルコ共和国が、―nənəナナ一号機を発表。その滑稽な姿が世界中から嘲笑される。

§カボチャのシルエットが、後に祖国の前衛芸術家のオマージュだと再評価される。

§前衛芸術家の珍妙な婆さんから口に接吻されているとてもインパクトのある写真。



…………………………きついのぅ



§世界情勢の緊張激化。三竦さんすくみ。四竦み。五竦み。六竦み。―nənəナナ竦み。

§トルコが隠密裏にアゼルバイジャン新都市計画―nənəナナ採用の交渉開始。

§―nənəナナが、重力と時間と空間の謎を勝手に推理し勝手に検証し始める。



国旗はどちらもオスマン帝国の流れを汲む、三日月と星の組み合わせ

大国がけん制と混沌の中、トルコもアゼルバイジャンも、したたかじゃて

国際情勢とは、はかり難くまことに複雑怪奇で絶えず入り組んでおる


そもそも周囲を陸地に囲まれた水たまりが、なぜ海となったのか?

塩水だから? 大きすぎるから? 怪物が潜んでいたから? 違う、

ソビエトの崩壊でカスピ海の沿岸国は、突如、二カ国から五カ国となった

ロシア アゼルバイジャン イラン トルクメニスタン カザフスタン


では、カスピ海に眠る豊富な石油や天然ガスの取り分は?

カスピ海が湖と定義された場合、その資源は沿岸五カ国での共同管理

カスピ海が海と定義された場合、国連海洋法条約により十五海里の領海とみなされる

一番割を食う形のイランは当時、米国に頭を押さえつけられている

こうしてカスピ海は地形学上の分類を超えて、法的には海となった


なんたる曖昧模糊あいまいもこ。わしが興味あるのは、カスピ海のキャビアの行方ゆくえだけじゃ



§―nənəナナが、ロブスター(非常識に高いビル)に導入される。

§―nənəナナの、驚異的能力が評価され他の施設にも導入が進む。

§―nənəナナは、謎の究明のために勝手にAIの設計に取りかかる。



ここまで恋の話なしっ!

可憐な草姿そうしに下向きの白い花を咲かせるスノードロップ

その群生に一本だけ顔を上げる 赤い 赤い 赤い 薔薇

白いそうめんにあがらうように混入された一筋の赤そうめん

彼にはそれがないっ!


まるで……透明人間?





§疲弊した世界各国が、―nənəナナが設計した新型のAIに着目する。

§疲弊した世界各国は、―nənəナナに国際法違反で導入を打診する。

§疲弊した世界各国に、―nənəナナの破棄が新型AIより命令される。



はい? 途中から意味がわからん 資料は? 資料が少なぁぁぁぁい 

シンギュラリティを飛び越えて遂に人間ではなく初めてAIがAIを産んだ

AIのAIによるAIのためのAIじゃな ドミノ倒しのように進化しマザーAIとなる

じゃが、―nənəナナはマザーAIの母のような存在 わしには理解が難しいが

マザーAIの母だから我々人類のおばあちゃんのような存在ではないのか?

どうして破棄する必要がある? 老後を悠々自適に過ごさせればよいではないか

自分の創造主を破壊するなど神をも恐れぬ……あっ……わしは無神論者じゃった



§※※※※※消息不明※※※※※※※※※※世界情勢は悪化※※※※※※※

§※※※消息不明※※※※※※―nənəナナの権利放棄だけが発表※※※※※

§※※※※※※※最終局面※※※※※※※※※未だ消息不明※※※※※※※※※※



心臓が 痛い 痛い 痛い  ハァ ハァ ハァ


遺伝子が同じなだけなのに、胸が押しつぶされそうになる


不吉な予感がする 人生のどこぞに わしはなにかを置き忘れてはいまいか? 






§ピストル自殺との報道。正確な場所や経緯など詳細不明。享年35歳。



なんじゃそれ? なんで死んだ? 35年? ほんの一瞬の人生ではないか

なにを知った? なにを想った? 資料は残ってない また知るすべもない 

幾度、繰り返したとしても同じ人格は訪れない 知ったとしても何になる?

ふざけとる これはなんの拷問かのぅ 夢に手を伸せば伸すほど、腕がつる

いつ罪がまとわり付いた どこに死の匂いがする? 心の奥の何に囚われた

靴を舐めるほどの屈辱のパラダイス 何もわからん わかるとするならば……



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