第13話

 沙奈はあの事故の日から学校に行かなくなった。


 どうせ一週間後には死ぬんだし問題ないと思ったからだ。

 秘書さんや親戚の人たちは皆、口を揃えてこういった。


「あなたはそんなのでいいの?」


 いいよ。


「もっと頑張りなさいよ」


 やだ。頑張ってもお父さんとお母さんは戻ってこない。


「甘えないで」


 私がいつ何に甘えたの。


 何も知らないくせに。

 私のことなんて本当はどうでもいいなんて思ってるんでしょ。


 偽善者ぶるなよ。


「どうして沙奈さんはなにもかも諦めてしまっているんですか?」


 死神は私に質問する。

 今日は一週間のうちの一日目だ。

 ああと一週間後には私はこの世界からいなくなることになっている。


「お父さんとお母さんがいないこの世界に価値はないから」


 どうせ死ぬんだ。どうにでもなればいい。


 私が消えたところでこの世界は何も変わらない。


 私以外の誰かが底に当てはまっても同じだ。


 いつもと同じように回り続ける。


「そうですか……では、外に行きませんか?」


 動きたくないって。まあわかるはずもないよね。死神だし。


「いやだ」


「行きましょうよ。何か見つかるかもしれませんよ」


 死神はなおも私を説得しようと絡んでくる。


 10分ほど言い合ったが、私は面倒になって折れた。


「はいはい」


「ありがとうございます」


「で、何処行くの」


 私がそう質問すると死神は


「沙奈さんの行きたいところっ!」


 と即答した。

 

「私、行きたいところなんて無いんだけど」


「えぇ〜〜〜、どうしよっかぁ」


 死神は残念そうにそういった。

 アイデアなんて出そうとしなくていいから。


 私はなんとなくさっきまでみていたテレビを見る。


 画面に写っていたのはUSN。

 ユニバーサル・スタジオ・ニッポンだ。


 私がテレビに写っているUSNをみていることに気づいた死神は「ここに行きましょう!!」と私に言ってくる。


 私は何も聞かなかったことにして、本を自分の部屋から持ってきて読書を始める。





 しばらく無視していたのだが、死神がうるさすぎて、本当にしつこすぎて、私は面倒になった。


「はいはい、行くわよ、行けばいいんでしょう」


 私が折れると、死神は途端に笑顔になる。


 まったく、面倒なのと知り合っちゃったな。


 なんて私は思ったけどもう遅い。


 私はお金を用意して、USNに行くための準備を始めた。



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