第8話

 夜が明けた。


 そして、三日目が始まった。


 カーテンの隙間から差し込む日差しが春希の顔を照ら――さない。


 そう、春希は昨日、ベッドで寝ていないのだ。


 昨夜、死神と二人で夜の街を歩き回り、ずっと話し続けていた。


 そのせいで春希は眠気にあらがえずに、ベッドで眠ることができなかった。


 ――しかし、春希の体内時計は、いつもと同じように、春希の意識を覚醒させる。


 「……んっ」


 春希は眼をあけ、首をかしげる。


 ――何故ぼくはベッドで寝ていないんだ……?


 と。


 春希は昨夜のことを脳をフル回転させ思い出す。


 ――そうか、昨日は死神さんと街を歩いたんだ。普段そんなに歩かないし、その反動で来た眠気に抵抗ていこうできずにここで寝ちゃったんだ。


 春希は昨日のことをなんとか思い出し――。


 再び首を傾げる。


 ――何故なぜ死神さんがいないんだ?


 実は、死神はすでに起きている。春希はもちろん知らない。


 春希は「まぁいいか」と死神のことを忘れ――られなかった。

 春希は苦笑いしながら自分の部屋に行く。


 そこには――昨夜春希の描いたデッサンを眺め、だらしない顔をした死神がいた。


 春希は思わず、


「――なにしてるの、死神さん」


 と、死神に尋ねてしまった。

 死神は、春希の声で我に返り、顔を紅く染めながら、うつむいた。


 春希は「どうしたんだ……?」と疑問に思ったが、「どうでもいいか」とすぐに記憶から消し去り、学校へ行く準備を始める。


 普段と変わらない毎日に春希はうんざりする。


 ――いつこのループから抜け出せるんだ。


 ――いつこの色のない世界が終わるんだ。


 ――いつこの何も感じない世界が終わるんだ。


 誰か終わらせてくれ。


「――いけない、負の連鎖に嵌まるとこだった」


 春希は頭を降って思考を無理やり停止させる。


 春希は準備を終え、学校へと向かう。


 もちろん死神も少し遅れてついていく。


「ねえ死神さん、この世界って誰が作ったんだろうね」


 登校中、春希はなんとなく死神に尋ねる。


 だが、死神が答えられるはずもなく、死神は困ってしまった。


「あぁ、ごめん……わからないよね……」


 さすがの春希でも死神が困っていることには気づいた(偶々たまたまだが)。


 それからは春希も死神も無言で歩き、学校に着いた。


 春希は無言で校舎へと入っていく。


 今日は特に何もない。


 休んでも良かったのだが、そうすると、時間が大幅に余ってしまう。


 神社からの景色を眺めればいいと春希は考えたが、今の時刻は午前8時。


 星を見るにはまだまだ早い。


 星どころか月すら視えないだろう。


「――はぁ……」


 なんだか憂鬱な気分になって春希は溜め息を吐く。


 死神が春希に訝しげな視線を向けるが、春希はもちろん気づかない。


「はぁ……」


 死神は春希に対し、もう一度溜め息を吐くが気づく気配がない。


 春希は死神には気づかないまま、靴を履き替え、自身の教室へと向かってしまった。

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