第11話
「――はぁ……」
と少女は体内の空気を全て吐き出してしまいそうな勢いで溜め息を吐く。
どうやって生きていけばいいの。
どうしてこうなったの。
なんで私は生きているの。
なんで私だけ残されたの。
少女は問う。
誰に? 自分自身にだ。
意味なんて無い。
いつか、いや今すぐにこの世界から消えてしまいたいと少女は願った。
自ら命を断てばいい。そのことを少女はわかっている。
しかし少女にそんな勇気はない。
死にたいのに死ぬのが怖い。
そんな矛盾しているような考えが少女の思考を駆け巡る。
悲劇が起きたのは、2日前の夜。
家の電話が何度も掛かって来た日のこと。
両親の帰りを待って、いつもと変わりなくテレビをみていた少女――紗奈へ、一通のメールが届いた。
メールの差出人は両親の経営している会社の秘書だった。
紗奈はなんで秘書さんが、と不思議に思ってメールを開き、内容に目を通して言葉をなくした。
メールには、『両親がなくなったこと』が、淡々と書かれていた。
病院から何度も電話が来ていたはずだけどどうしたのかと、メールで聞かれていたことで紗奈は気づく。
あの電話は学校からではなく、病院からだったのだと。
紗奈はそれに気づくと同時に走り出す。
何処へ? もちろん病院だ。
何のために? 行かなきゃ、と思った。
2つめの横断歩道を渡ったところで、紗奈は背後からの人の気配に足を止める。
気になって振り向くと、そこには真っ白な死神が立っていた。
直感的に死神だとわかった。
黒ではなく、白い死神だ。
骸骨ではない。人の肌を持っている。
男ではない。女の子だ。
大きな鎌も持っている。
なぜか今にも泣きだしそうだ。
「だれ?」
紗奈は白い死神に問う。
「私は死神だよ? あなたのことを見に来たの」
そういった死神の目は赤く腫れている。
紗奈は意味が理解できず、思わず頭にクエスチョンマークを浮かべてしまう。
「私のことは気にしないで先に行って?」
死神はそう言って、そばにあったベンチに腰掛ける。鎌は立てたままだ。
紗奈は自分の目的を思い出し、再び走り出す。死神のことは思考の隅に追いやって。
そして走ること数分、病院に着いた紗奈は受付の人に自分の名前を伝え、両親の眠っている部屋まで案内してもらった。
部屋に入ると、すでに両親の親戚や会社の部下がすでに来ていた。秘書もすでに来ている。何処か疲れているように見えた。
ここに来ている人たちのほとんどは、両親の経営している会社が欲しいんだろう。
だってありえないほどに有名だから。
そう考えて紗奈は自分のそんな考えに吐きそうになる。
眠っている両親の前に立ち、紗奈の頬を涙が伝う。
そこから紗奈は記憶がない。
気づいたら葬式が終わっていた。
いつの間にここに移動したんだ。なんて紗奈は考えたが、どうしても思い出せない。
2日前のことを思い出して、紗奈は、心が重くなる。
これからどうやって生きていけばいい?
何を信じて生きればいい?
家の外にひろがる闇に溶けて消えたい。
死にたい。死にたい。死にたい。
あの優しかった両親はもう居ない。
望めば何でもしてくれたあの両親はもう居ない。
消えてしまいたい。
この無意味な人生を終わらせてほしい。終わらせたい。
――そんな負の連鎖に陥りかけた紗奈に、声が聞こえた。
――誰も居ないはずのこの家に。
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