第6話
「……綺麗ですね〜」
死神が春希に言った。
「そうかなぁ……」
春希と死神は、春希の絵を見に美術館に来ている。
「そうですよ、写真みたいで凄いです! 光って見えます!!」
死神が興奮したように言う。
「――写真だよ、って言ったらどうする、死神さん?」
春希はにやりと笑っていった。
「――えっ?」
死神が絶句する。
――まさか……。
「嘘だよ、嘘。写真なわけ無いじゃん」
「ですよね……こんな素晴らしい絵が写真に見えるなんて私も疲れてるんですね」
「実はさ、僕もね……描き終えたときに思ったんだ。写真みたいだ、って」
春希が静かに言った。
「何の取り柄も無いのに、絵だけ上手くても困るよね……」
そういって春希は「ははは」と乾いた笑いを浮かべる。
その後、何時間かかけて、春希と死神は、絵を見て回った。
全部の絵を見終えた春希が言った。
「……次は何処に行こうか」
時計の針は12時過ぎを示している。
「また昨日のところに」
死神が答えた。
春希が頷いた。
二人は美術館を出て、来たときよりも数倍の時間をかけて家に戻った。
来たときとは違って、二人は他愛のないことを話しながら歩いた。
――学校で✕✕して、〇〇先生に怒られたんだ……。
――私も春希さんと似てて、死神長さんから、〇〇のことで怒られちゃって……。
そんなことを延々と。家に帰り着くまで話を続けた。
ゆっくり歩いていたこともあり、家につく頃には5時になっていた。
「ふう、ちょっとまってて」
そう言って春樹は家の中に入った。
数分後、春希はスケッチブックと鉛筆を持ってきた。
「絵を描くんですか……?」
死神が尋ねた。
「そうだよ」
春希が言った。
「あの景色と……」
そう言って春希は少し間をあけ、こう言った。
「死神さんを書こうと思うんだ」
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