1.昼下がりの神の憂鬱
神が下界を見下ろして考えていた。
人間たちが争いばかりしているのは、神の存在を知らないためではないか?
そこで東の地に降り立って、人々に神の存在を知らしめることにした。
「私はいつでも、どこにでもいて、人々を見ているぞ」
人間は驚き神を敬った。
しかし、定義が曖昧だったので、東の地の人々にとって神はそこいら中にいることになってしまっていた。
神がそれに気がついた時には、すでに神は八百万もの種類があることにされていたのである。
ここまで増えてしまってはもう収拾がつかぬ。
神は前回の失敗を踏まえて、西の地に降り立った時にはこう付け加えた。
「良いか? 神はわし一人だけ! 他に神は無い」
西の地に住む人間は驚いて、神を唯一の存在としてあがめた。
今度は良い感じに見えた。
神は満足して、その後もいくつかの地に降り立って存在を知らしめた。
しばらくして神が下界を眺めると、世界で大規模な戦争が起こっていた。
「神の存在を信じぬ愚かものどもめ!」
怒りのあまり杖を持つ手を震わせながら、どんな天罰を与えようかと見ていたところ、不思議なことに人間たちは神の存在を信じているようだった。
原因をよく調べると、それぞれの国の人間は、隣の国の神を絶対に認めようとしなかったからである。
……。
神は杖を放り投げ、寝転がってテレビでも観ることにした。
ふと思いついて、神は杖を持って立ち上がる。
テレビでは宇宙人襲来のSF映画が放送されていた。
ショートショートの段ボール箱 須藤二村 @SuDoNim
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ショートショートの段ボール箱の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます