すこしふしぎが、心を温める。

正直もっと猟奇的な作品かな、サスペンスかな……と思って読み始めたのですが、予想を裏切られました。ドロドロ要素微塵もなかったよ(笑)

心臓は人の命を左右する部位ゆえに、そこが障害されると自由を奪われるものだと思います。自由に動けない、強要するわけにいかないことは分かっている。それでも見て欲しい世界があった──そんな純粋な思いが、意外な結果を生んだのかなあという気がしました。

個人的には男性の心理描写が非常にうまいなあ、と感じています。その人のために望んだことでも、恩着せがましい言い方はせずに笑いに変えてしまう、そして相手もそれを追求しないというのはよくあるなあと思うので(特に仲がいい関係ほどそうなる傾向)。

心臓を奪われても本体が生きている、という不思議な設定を最大限利用して書き切った青春短編。さわやかな心の交流が疲れた大人の心にしみる作品でした。

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