女神なんてなれないまま、あたしは戦う!



 本作は、オリュンポス神族とティターン神族の戦争を描いたティターノマキア物である。ティターノマキア物というジャンルがあるかどうかは、知らないが。

 本来神々の戦争であるティターノマキアに、戦女神アテナの死と、それを受け継ぐ人間の少女を配し、その少女の視点で神々の戦争を描いている。

 物語がスロースタートのため中盤以降から勢いがつく。少女エストリーゼのキャラクターがきっちり確立されるからだろうか。

 本作は人と神の物語ではなく、神々の世界に紛れ込んだ一人の少女の物語である。そのためだろうか? 人間はほぼ出て来ない。人間の少女の視点で描かれるが、神々の世界の物語なのである。

 とはいえ、彼女をとりまく神々は人間臭く、それぞれに個性と行動原理が与えられ、きっちりと描き分けられている。群像劇として動き始めてからの物語は飽きがなく、それでいてストレスなく楽しめる。

 読みやすい文章で描写された抒情詩のような本文と、にぎやかなキャラクターたちにより、SF的大戦ものというよりは、毎週テレビで見る連続ドラマのような感覚で読み進めることが出来る本作。
 個人的にはアテナのキャラクターが好きかな。

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