ギリシャ神話を再構築して描かれる少女の戦いを描いた叙事詩

主人公はエストリーゼという人間の少女です。

彼女は災いや魔物による危機に瀕した故郷を憂いていましたが、ある出来事をきっかけに戦神アテナの後継者として選ばれます。
そして、乱れた世界を安定させるために巨人と神々の戦いに身を投じることを決意するのですが、彼女を導いてくれるはずのアポロンは一癖も二癖もある傲慢で気難しく、女たちを侍らす享楽的な神でした。

さらに、彼女がアテナを継ぐきっかけになった本来の女神アテナの死は実は誰かの手で仕組まれたものだとわかり……。

幻想的な情景描写はさながら神々を主人公にした歌劇をみているような気持ちにさせられます。
またギリシャ神話という完成された物語を、一人の少女の活劇として見事に再構築しているのも見逃せません。

最初は一人だった主人公ですが、そのたおやかさ、ひたむきさに少しずつ味方をする神も増えてきて、やがて事態を動かす中心として活躍していく展開には心惹かれるものがあります。

文体も読みやすく、それでいて神々しい独特の雰囲気がありました。
荘厳にしてファンタジックな少女の冒険の物語です。

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