誰かに向けた、あいのうた。

しばらくこの小説をフォローしたまま放置していた。
僕も書いてるし、書いている時はあまりカクヨムの小説を読まない。そういう、いつかは読もうと思っているフォローしたままの小説がずっとマイページに溜まっていってしまう。

かこいち、きゅうてい、あいしあう。

かこいち、きゅうてい、あいしあう。

僕は犬怪さんのエッセイが好きでよく読んでるのだけど、読んでて一度涙が出そうになった事がある。それは仙台から埼玉に戻る途中の新幹線の中で読んだエッセイで、特に「悲しいこと」が書かれてる訳でもないエッセイだったのだけど、何故か胸に「クッ」とキて、涙目になってしまったのだ。東京方面に向かう新幹線の隣には僕の友達が座っていて、多分僕はその人に「これ、すごく良くないですか? 何だか泣きそうになってしまったのだけど、読んでもらっていいですか?」と聞いてみるべきだったのだ。でも友人は眠ってしまっていた。それで、多分これは僕の寝不足からくる、情緒不安定によるものだろう、と思い込む事にしたのだ。

それから、「かこいち、きゅうてい、あいしあう。」を読むべきだ、という一種予感のようなものがいよいよのさばってきた。何しろ、題名が気になる。全部ひらがなだ。耳に残る題名だ。実際口に出して言ったことはないけど。

読みながら、やはり何度も涙目になってしまった。
普通に「泣ける」と書ければどんなに楽だろう。
読み進めるにつれ、悲しい、とは違う、憧憬に近い何かがじんわりと突き上げてくる。素朴な、誰かに向けた愛のうたのように、真摯に愛おしく文章を重ねた小説でした。

とある運動部の先輩と後輩の物語。
小説の構造を理解してからの驚きと没入感が素敵ですので、途中でやめてしまった方も、ぜひ日を改めて何度か挑戦していただきたい。幸い、何度読んでもお金は今のところ掛からない。御一読をお勧めします!





その他のおすすめレビュー

江戸川台ルーペさんの他のおすすめレビュー553