本屋さんって、大変なんだな

最近、実家の近所のTSUTAYAが潰れてしまった……。
TSUTAYAが出店した時はあんなに嬉しかったのに。
最後に行ったのはいつの事だろう、思い出せない。

という不吉な話は置いておいて、本作は書店のお仕事小説です。
本屋って、大変なんだなぁ〜、とため息をついてしまう。
イキイキと楽しげに働く人たちには色んな事情があって、面倒くさそうに、でもちょっとだけ楽しそうに働いている。少し羨ましい気持ちになった。

とりわけ、本屋といえばの「万引き」事件が第1話になっているのだけど、庄野というベテランバイトがスカッとジャパンを彷彿とさせる見事な解決を見せる。第2話では、握手会で写真集をたくさん売ると豪語した大学生・島尾があの手この手で(買い切りにも関わらず)たくさん仕入れ、山ほど売れ残るピンチに陥る。そこでまた庄野が現れ奇策を……という、庄野、何者? な謎が残ったまま書籍化待ちとなった現状である。気になって仕方がない。一体、どうなってしまうのか?

謎といえば、庄野がレジをしていると何故か商品を元に戻して立ち去る「スクールカースト上位」っぽい女子高生。その他、おそらく今後明らかになるであろう、「庄野は何故本屋で働いているのか?」など、数多く残っている。

何故、本屋で働いているのか?

という問いは、そのまま本屋が衰退しているにも関わらず、という事に対する答えにもなるだろうし、「何故○○で働いているのか?」という○○には、読者自身の職場を当てはめることで、新たな視点が得られるやも知れない。

問題作『熊本くんの本棚』を書いたキタハラさんが、一本まっすぐなお仕事小説を書くというのは、正直なところあまり想像がつかないけれど、緻密な取材をして書き上げた『京都東山「お悩み相談」人力車』を楽しく読了した身として、キタハラさんが新たな領域を意欲的にザックザックと開墾中であるのを僕はひたすらweb小説界隈の奥底の端っこから生暖かく見守っている次第であり、必ず何かが起こる。何かが一味も二味も違うものになるだろうと予想せざるを得ない、予測不能なドキドキがある。早く書籍版を手にして読みたい、という気持ちでいっぱいです。待ちきれない!

ぜひ一度、体験版として読んでみることをお勧めします!