突き詰めた愚かは芸術に至る──のかもしれない

ともかく、ともかく、この『先輩』という男、凄まじいまでの愚かである。関わった女性と俺の敵だ。どうにか滅したい。もし私が高尚な僧ならはま「破ァ!」の一言で眩い光と共に消え去りはしないだろうか?もはや魔の類である。
そんな愚魔先輩とそれに負けず劣らずの愚かである後輩との爛れ焼けたようなセフレ以上恋人未満の日々を丁寧に綴った名作。
完結に近づくほどこの先輩が許しがたくなる。だが読み終えた後こう思わざるを得ない。
「私は許そう。だがこいつが許すかな!」
放たれたトミーガンの銃口からは一輪の美しい花。まるで手品。そう、手品なのだ。分かりきったタネに当然のように騙されて、そこに生まれる小さくも重い感情を噛み締めるような。

まあ読者という名の外野の憤りがどうであれ、この二人がそれでいいなら何も言うまい。どこまでも子供のように純であまりにも擦れてしまった不純を享受していくのならそれに私は拍手をしよう。
二人の結婚式には是非とも読んで欲しい。ライスシャワーをなぜさせて欲しい。その時は的確に新郎の目を狙おう。

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