【永遠の幸せ】

【END2 永遠の幸せ】


剣を――捨てた。

私の手から剣が滑り落ちていく。白の中に溶け込むように、やがてその姿は見えなくなった。

彼は怒っているだろうか、呆れているだろうか。恐る恐る顔を上げると、そこにあるのはいつもと同じ笑みだった。

「……しょうがない子だね。お前は」

少しだけ困ったような顔で、暖かい言葉を私に贈った。

いつのまにか私たちは、元の世界に戻っていた。あのガラクタを見て心が落ち着く時が来るなんて、最初の私に言ったら信じてもらえないだろう。

「クリスティーナ! クリスティーナ!」

彼女の声が聞こえた。満面の笑みで、こちらに駆け寄って来る。

「あの場所から出られたのね!」

手を取って笑い合った。本当に嬉しい。

その少し後にのんびりとした足音を響かせながら、彼もやってきた。

「あの蝶、実は子供を産んでいたんだ」

新しい命が、指の上で震えていた。

嬉しくて、暖かくて、幸せで――私は笑っていた。沢山、沢山……大好きなみんなと一緒に。


「クリスティーナ! これはどうかしら?」

「ご、ごめん。もうお腹いっぱい」

「そうだ。太るぞ」

「太らない!」

彼が笑う。彼女も笑う。

「もーう……」

「君は少し肥えても可愛いよ」

「肥えるって言い方しないで!」

彼が笑う。みんなが笑って、私も笑った。


あれから不思議なことに、世界は暖かい場所ばかりになった。冷たく暗く、寂しいところは存在しない。柔らかく綺麗で、私を包んでくれるような素敵な世界。

私が欲しいと思ったものは、みんながどこかから探して持ってきてくれた。何の不自由もない。寝なくても、ずっと遊んでも疲れないし、楽しいことだけをしていられる。

みんなとずっと一緒の世界。悲しいことも寂しいこともない。危険なこともないから、誰かとの別れもない。

でもこれって、一緒って……一体いつまで続くんだろう?


難しいことは、余計な考えは、紅茶に溶かした砂糖のように消えていった。甘い甘い溶けるような日々。大丈夫。これは、ずっと続くんだ。

私はとっても、幸せ。

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