第8話 中野ブロードロードの戦い②

スズキは万を超える高額なフィギュアは滅多に手を出さない。確かに買ったら満足するだろうけど次から次へと欲しくなるのは目に見えているからである。ただ、いつかは…と考えているのでよく調べて情報収集はしているのだ。


2人は店内へ入る。中古商品を取り扱う店で最重要コーナーは、きちんと陳列された棚ではなく、箱や袋に入っていないルーズ品(ジャンクコーナー)なのである。


箱があれば、そのおもちゃが何の作品のどんなキャラクターの商品なのか調べてられるがむき出しの本体のみとなると店側の知識というより値段をつける個人の知識が問われるのだ。国内のキャラクターならある程度はわかるだろうが海外キャラクターだと主役か悪役かサブキャラなのかすらも判別の難易度が跳ね上がるのである。さらにアメコミキャラクターは簡単に説明すると、よくコスチュームが変わる。これは日本の漫画と違い制作体制が誰が書いている漫画ではなく、【この会社のキャラクターのお話】なので話によってストーリーを書く人も絵を書く人も違うのである。例えばタランティーマンと言っても、コスチュームがアホみたくいっぱいあり、それを律儀に立体化されていたりする。


つまり、一般の方が「タランティーマンっぽいフィギュアの特徴だけど何か違う。粗悪なパチモンだろう」となってしまうフィギュアが実はマニアの視点で見ると「これは◯◯と戦った時のコスチュームのフィギュアで正真正銘のタランティーマンのフィギュアじゃねーか!この値段とかマジか」という事態が結構起こる。


これがアメトイ集めの醍醐味の1つとスズキは考える。人によってはガラクタでもマニアにとってはお宝なのだ。


スズキはルーズ品コーナーを高速で物色する。もちろんここにある全ての商品を把握しているわけではないが大体は何の作品のものかくらいはわかる。


「…あった。[トイバズ]版[アメイジングレジェンド]のウォーターマシン」


「なにそれ?」


「ダイアンマンの2号的な存在なんですけど映画にも出てるキャラですよ。それのコミック版のフィギュアです。」


「あー!あれか我々世代には格ゲー[アメイジングVSカプコム]でお馴染みの!」


「そーそーそれです。版権の問題でダイアンマンがゲームに出せなくなって仕方なく色を変えてウォーターマシンとしてゲームに出てしまったので、ある世代にはダイアンマンより馴染みのあるウォーターマシンです」


「あれのせいでダイアンマンが映画化した時に何で2号の方を映画化するんだ?って思った人絶対いたよね笑」


「まー常人にはわからないところにロマンを感じるのがマニアってやつですよ。このウォーターマシンの未開封品が4000円は結構お買い得です。ブリスターは傷んでますけど俺はアクションフィギュアを開けないのはフィギュアへの冒涜と思ってるんで」


ブリスターと呼ばれるプラスチックの箱に収められたフィギュアを開封する勢力とスズキのように開けて飾ったり遊んでこそ本懐という勢力が存在する。どちらも自分で購入したものだからどーでもいい話のように思えるが、開封してしまったら温度、湿度、日光による日焼け、退色など劣化は避けられない。開けてないフィギュアの方が美術品として、貴重な資料として優れているのはいうまでもない。


「開けなくても緩やかに劣化はするもんね〜。」


「そうなんすよ。20年くらい前のものとなるとセロハンテープで止めてあったりするからそれによる劣化も気になりますしね。」









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