第7話 中野ブロードロードの戦い
約束の日。スズキは中野駅に降り立った。
中野〜高円寺は一時期に比べると穏やかになってきたがアメコミショップや輸入トイショップ、輸入雑貨が固まっているのでアメコミ好きなら1日楽しく過ごせるスポットの1つである。
「できれば高円寺まで足を伸ばしたいけどテツヲさんと一緒だからまた今度にするか」
「スズキくん待たせたね。では参ろうか。」
テツヲさんはスズキより少し年上で仕事はシステムエンジニア。もともとは特撮ヒーロー好きで戦隊ロボの元祖が西映版タランティーマンだと知ってからアメコミ業界に参入した男である。変身ヒーローが好きで特にガジェット使う系が好み。ネットコミュ障のスズキにとって数少ないネットを通じて知り合った友人であり、ダサかろうがその筋の元祖に敬意を表するテツヲ氏には信頼を置いている。
「スズキくん、この前君の番組に仮面ダイバーブレイブの中の人来てたでしょ」
ここで初めて明かされるがスズキのラジオ番組のディレクターである。
「え。聞いてたんですか?なんか恥ずかしいですね。」
「で、どうだった?」
「どう。と言われても…俺の世代ではないので感動も何も。部下は喜んでましたけどね」
「世代直撃だったら失禁する自信ある。僕ならちびるぐらいで我慢するよ。」
「上から案件だったんで俺がブッキングしたわけじゃないんですけどCD出したとかでプロモーションで来ましたよ。なんというかラジオに致命的に向いていませんでしたよ笑」
「あはは。変崎の滑舌の悪さは有名だからね」
「あー。自分の曲のタイトル噛んでましたね…」
そんな話をしているうちに中野駅前の商店街を抜けアーケードの終着点、中野ブロードロードにたどり着く。ここは商店街の延長のようでもある複合施設。生鮮食品あり、薬局あり、ゲームセンターあり、床屋あり、昔ながらの喫茶店や高級時計販売店も入っていながら、[がんだらけ]をはじめとしたサブカル関連のお店が1つ屋根の下に集まっているのだ。
一言で表すならカオス。
秋葉原とは違う雰囲気があり、ここには願ってもないお宝に出会えるかもしれないというなぞの確信がオタクやマニアを引きつける。
建物の全貌を見たことはないが上の階は居住区になっていているとかいないとか。
年期の入った建物で所々お店が潰れてシャッターが降りていたり、曲がり角を曲がると急に人の気配がゼロになったりと、ダンジョンのような感覚を覚える。
まずこの中野ブロードロードに入って最初に注意すべき事は 最初に見えたエスカレーターには乗らない事 である。
これは初見では不可避なトラップで1階から3階への直通の登りエスカレーターなのだ。ちなみに下りはない。
もちろんちゃんと案内所はあるが平日でも海外からの観光客も多く基本的に入り口付近は混雑しているので人の流れに任せて進むと痛い目にあってしまう。ちなみにスズキは一度2階の存在に気づかず帰ってしまったことがある。
中野ブロードロードの正解ルートは
【最初のエスカレーターは見逃してその横にある階段で2階に上る】なのである。
「テツヲさん、何階から見て回ります?」
「ここは中野ブロードロードと言いつつも[がんだらけ]に蝕まれた禁断のエデン。まずは中心地2階から行こう」
2人のハンターは階段を上がる
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