collect,gather,assemble!!
niboshiせんせー
第1話 孤高のフィギュアマニア①
この世には様々なマニアが存在する。もちろんマニア全員が同じ人種ではなく、それぞれがそれぞれで物の価値を見出し、それぞれの美学を持っている。そういった者だけがオタクではなくマニアと名乗るべきなのだ。
が、そんなのはたから見たら全部一緒。
マニア?オタク?どっちでもいいしキモい。そんなもん。
このお話の中心人物スズキは主にアメトイ と呼ばれる海外のフィギュアを買い集めている。ここでいうアメトイとは海外のアメコミキャラクターのフィギュア。アメコミ系フィギュアといっても手頃な値段から高額商品、手足が稼働するものからフル稼動、はたまたほぼ置物までさまざまな種類が存在するのだ。これは美学と欲望の間で彷徨う孤高のマニア スズキの物語である
今日は恵比寿にある老舗輸入トイショップ[クリーチャージャパン]に参上した。このクリジャパはかつて雑居ビルの2階と3階の2フロア店舗だったが不景気のあおりか数年前に3階のみになった。輸入トイのお店は決して多くはないし、基本的にアメリカ国内向けの商品という情報が少ない輸入トイを集める者としては歴史を知るこの店は安心価格とは言えないが品揃えなど絶大な信頼を置いている。あと1階にパン屋があって近ずくにつれいい匂いがする。
建物に入る前に軽く一礼。スズキなりの敬意を払い階段をあがる。踊り場には灰皿があるがあまり使われている形跡はない。ただ昔ながらの客への配慮であろうこういう老舗ならではな所は好きである。
まず階段を登りきった所にある店の外の陳列棚からチェックだ。ここには主力商品はあまり置かれない。外に置くという事は排気ガスや埃を被る可能性がありパッケージも含めて半美術品としての価値があるフィギュアが並んでいるという事は、店側がそういった扱いをしても買ってもらいたい半ば在庫処分に近い物なのだ。
「ふむ。スターウォールの不人気キャラ、パッケージへこみのあるヒーローフィギュアか。私の好きな[アメイジングコミックス]のキャラはいないな。特別刺さるキャラもいないしスルー。」
セール用ワゴンに近く。ここにはちょっと旬は過ぎた映画化作品のグッズやルーズ品と呼ばれる本体のみの中古品が並んでいる。思いがけない掘り出し物に会える事もあるので軽視はできない。
「[デセニーフィクサー]映画のノートにステッカー…いらないなぁ。ルーズ品は…これは!アメイジングレジェンドシリーズのピッグ・キューリ長官!しかしお値段はパーツ欠損で3000円か。未開封品でも手に入るクラスだしまぁ、持っててもいいけど今焦って買うほどのモノではねーな。」
この間わずか十数秒。スズキは自分が集めている作品のキャラの容姿、配色、特徴、付属されているであろう武器などを脳内でデータ化しパッシブスキルとしてマニアモードの時は常に発動しているのだ。このスズキ・フィギュア・フィルター(SFF)を通す事で一般のウィンドウショッピングとは比べものにならないスピードで物色する事が可能なのだ。もはやショッピングはハンティングに昇華した。
「お店の継続のためにも投資という意味でいらないものを遊び心で買ってあげたいという気持ちはあるが…許せ。今の私には金とスペースがないっ!」
そして多くの悲しみを背負いし者スズキは店内へと向かう。
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