第10話
◯とある神社の境内(夜)
数百匹の猫が並ぶ。
それを囲うのは数百匹のカラス。
狛犬の上に巨大な影を落ちる。月明かりに照らされて八咫烏がとまる。
八咫烏「久しいのお 化け猫」
もう一方の狛犬が砕ける。その上に猫又が立つ。
猫又「あらーやっちゃん 相変わらず気色の悪い足 食べちゃいたい」
八咫烏「今からでも遅くはない引け 地を這う貴様らに空を飛ぶ我らが負ける道
理はない」
猫又「あら恐い でも牙を持たないあなたたちに猫が殺せるかしら?」
八咫烏「殺す? カラスは無益な殺生を好まんのだ…」
カラスたち『『COOOOOORRRRRROOOOOOWWWWWOOOOO!!!!!!!』』
直後「明烏」の輪唱が境内に響く。
猫たちが次々と倒れていく。
猫又の巨体が地響きとともに崩れ落ちる。
八咫烏はその傍へ舞い降りる。
八咫烏「愚鈍な化け猫 はじめから貴様らに勝機などな、ーーい?」
八咫烏の胸に猫又の爪が突き刺さる。
そのまま引き裂き血と内臓が猫又へ降り注ぐ。
猫又「あっはあああん! すっごくエロチックな お・に・くっ!」
八咫烏、臓物を撒き散らしながら距離をとる。
猫又は「粉」を取り出す。
猫又「マタタビを結晶化した超天然合成ドラッグ『M』! あんたたちの囀りな
んか屁でもないわん」
他の猫たちも同じものを取り出す。そして皆一斉に鼻から粉を吸う。
猫たちが発情期のような声を上げる。
猫又「秒でアガりゅううううううう!」
× × ×
草葉の陰から教授(耳栓)と数人の学生がその様子を見守っている。
教授「とんでもない大発見だぞ… これだけのカラスとネコが一堂に会して本当
に戦争でも始めるのか? うわ! 巨獣大乱闘か!? そもそもあれは猫とカ
ラスなのか?」
教授は目の前の光景に釘付け。
その後ろ学生の中に変装したサバ子と嘴がいる。
二人は目配せする。
サバ子「先生! 危なあああい!」
教授「ぐえっ!」
教授はサバ子に押されて、猫とカラスのど真ん中に躍り出る。
教授「いててて…」
数百の視線が突き刺さる。
八咫烏が鳴く。
八咫烏「なぜ人間がここにいる!?」
猫又「見られたからには 喰い殺すしかないようね!」
教授「ぎゃああああああ喋ったあああああ!」
嘴とサバ子は動物の姿に戻り、教授の持つ網の中へ飛び込む。
派手に暴れる。
嘴『COORRROOWOOOO!!!!』
サバ子「ぎにゃああああああああ!」
それの叫びを皮切りに猫とカラスが縦横無尽に飛び回る。
嘴「お前ら早く逃げろ! 全員捕まるぞ! この人間は…ヤバイ!」
八咫烏「太!」
嘴「ヤタガラス様! お加減は!?」
八咫烏「日光さえ浴びればわしは問題ない! だがお前は一介のカラスに過ぎな
い! 食われてしまえばそれまでだ! 父と同じ道を歩むつもりか!?」
嘴「同じ道かどうかはあんたたち次第だよ…」
八咫烏、嘴の言葉に察する。
八咫烏「すまぬ太…」
八咫烏、飛び立つ。
猫又「サバ子! 今助けるわ!」
教授の前に猫又がそびえ立つ。
ライオンサイズの猫を前に教授は泡を吹いて倒れている。
サバ子「猫又様! お逃げください! この人間は猫を食べる化生でございま
す! 猫又様といえど無事では済みませぬ!」
猫又「…な なんですって…」
サバ子「猫又様いえ母上 この強大な敵を倒す方法はただ一つ カラスと手を取
り合うことです ーーイマリ! チーバ!」
二匹の猫が現れて、猫又の首の後ろを噛んで無理矢理連れて行く。
猫又「サバ子! サバ子おおおおおおお!」
× × ×
やがて静まり返る境内。
身を潜めていた学生たちがちらほらと姿を現わす。
猫とカラスが網の中で抱き合うように丸まっている。
嘴「大根役者」
サバ子「どんぐりの背比べですよ」
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