第4話

◯大学・構内

嘴「あ」

サバ子「あ!」

   嘴とサバ子が再会する。

嘴「阿呆学生に媚び売って飯にありつこうって魂胆か?」

サバ子「違います! 勉強です! 学問は万人に開かれているんです!」

   サバ子は踵を返す。

   嘴はその後をついていく。

サバ子「ついてこないでください!」

   サバ子の腹の虫が鳴く。

嘴「あんたは学問の前に自分で餌取ること勉強した方がいいな」

サバ子「…窃盗の共犯はごめんです」

嘴「…ついて来い」

   サバ子、嘴に連れられて学食に入る。嘴は食券を買わずにカウンターへ。

   食堂のおばちゃんと談笑した後、二人分のカレーを持って戻ってくる。

嘴「タダじゃねえぞ 授業が終わったら皿洗ってけ」

サバ子「こんな裏技が…」

   二人でカレーを食べる。

嘴「で? 人間の知恵なんか身につけてどうするつもりだ?」

サバ子「人間と猫の共存の道を模索しているのです」

嘴「共存も何も嫌われ者のカラスよりよっぽどうまく取り入ったと思うぜ?」

サバ子「だから飼い猫と野良猫のーーっ!」

嘴「わーったよ 野良猫の誇りだろ?」

   サバ子はしゅんとして、カレーを運ぶ手が止まる。

サバ子「…あなたこそ こんなところまでご飯を食べに来てるんですか?」

嘴「まあな」


◯大学・講義室

サバ子「ごちそうさまでした わたしは授業があるので失礼します」

   サバ子は学食の前で嘴と別れ講義室に入る。

   間もなくして白衣姿の女性(32)が教壇に立つ。

教授「今日の野生生物学は害獣・害鳥についてだ こいつらは捕まえて食うに限

 る諸君らの身近なところにいるのは猫やカラスだがこいつらも食える 無論

 様々な法的手順を踏まえた上でだが 猫食文化が社会的に批判されようと食え

 るもんは食えるんだ」

   サバ子は恐ろしくて身震いする。

教授「だが現実的ではない まず猫は飼い猫と野良猫と野猫の区別をつけないと

 ダメだ 狩猟していいのは野猫だけだ 野良猫を殺せば動物愛護法に抵触す

 る 飼い猫を殺せば器物破損だ 基本的にこの三種類をビジュアルで見抜く方

 法はない」

サバ子(M)「…え わたしは何? 何猫なの?」

教授「そしてカラスに関しても人間の罠で捕獲できるような個体は、放っておい

 ても冬を越せずに死ぬ これでは害鳥対策とは言えない それにカラスの肉は

 人を選ぶ味だ 結局ひとを選ぶ味ってのをひとは選ばない ーー先日わたしも

 カラスを食ってだな」

サバ子「まさか…」 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る