第5話

◯同(夕)・講義室外

   サバ子、授業が終わり講義室から出てくる。嘴が待っている。

サバ子「…ストーカーですか?」

嘴「行こう」

   嘴はサバ子の手を取る。

サバ子「え!? どこに!? それにまだお皿洗いが!」

嘴「食っちまったらこっちのもんだ」

サバ子(M)「…泡? 濡れている」

   嘴の服は泡がついて濡れそぼっている。

サバ子「ーーって! ストーカーっていうか 誘拐!?」


◯太の友人宅(夜)

友人1「貴様! こんな美人をどこで見つけてきたんだ!」

嘴「ゴミステーション」

   サバ子が連れてこられたのはアパートの一室。

   ドアを開けたのは男、友人1(20)。

嘴「こいつらは哀れな男たちその一とその二 …その三は?」

友人1「知るか! バイト先のチャーシューガメてくるっていってたぞ!」

   友人1は猛烈な勢いで部屋のゴミを押し入れに入れまくる。

   部屋の奥にもう一人男、友人2(21)がいて軽く手を挙げる。

友人1「女人に動じるおれではないが女人がおれに動じる! さあお嬢さんこち

 らへどうぞ むさ苦しいところですが案外居心地は悪くないですよ」

   サバ子は嘴に押し込まれるように部屋に入る。

サバ子「(小声で)わ わたし! 人間と話すの初めてなんですけど!」

嘴「こちらはサバ子ちゃん 三毛猫」

サバ子「なっ!」

友人1「カラスに猫にゴリラ! うちは動物園かっ!」

友人2「るせー おれはゴリラじゃねえ …髭剃った方がいいかな」

サバ子「(小声で)か 彼らは知ってるんですか!?」

   嘴は肩をすくめる。

嘴「それよりも腹ペコなんだ なにか食わせてくれ」

  ×  ×  ×

   鍋が始まる。

   男連中は女性がいることで緊張している。妙に背筋を伸ばして社会問題な

   どを語ろうとする。だが酒が入るにつれてただの馬鹿騒ぎなる。そのう

   ち、友人3(19)がチャーシューを持って現れる。

   サバ子、初めての酒と煙草を経験する。やがて悪酔いし暴れた後、カーペ

   ットの上で丸くなって寝てしまう。

友人1・2・3「「ーーっ」」

   男三人はかぶりつきでその姿を覗き込む。はだけた太もも、無防備な寝

   顔、リビドーが抑えられず顔じゅうの穴から煙が吹き出す。

   が、そっとタオルケットをかけてやる。

友人1「…おれたち こういうところがダメなんじゃねえかな」

嘴「けけけ哀れだね 人間がネコに発情してやがる」

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