ひたむきで純粋で優しさにあふれた物語に、心がスッキリと洗われます!

小説を読むのが大好きな地味な女の子が主人公。
彼女が思いを寄せるのは小学校の時からの同級生なのだけれど、思いを伝えるなんて大それたことなどできるわけがない。
クラスメイトとはあまりなじめないけれど、父を亡くしてから女手ひとつで自分を育ててくれた母親と、日々ささやかな幸せを共有しながら生活している。

奇想天外なキャラが出てくることも、壮大なスケールの舞台が用意されていることもありません。
ですが、そこには読む人をのめり込ませるドラマがあります。
目頭が熱くなる家族の絆があり、不条理なトラブルに直面する憤りを感じ、青春時代のみずみずしい感性に触れ、純粋でひたむきな思いに心が洗われます。

小説投稿サイトの闇を物語のスパイスにもってくるあたり、カクヨムを利用している読者の共感をさらに呼ぶことになりそうですし、作者様の経験談を織り交ぜることで風刺の要素も感じます。

けれども、本作を通して私が最も強く感じたものは、作者様ご本人の優しさと澄んだ心でした。

主人公のめぐりはとても可愛らしくて素直な良い子なのに、控えめで不器用な性格も災いして嫌な仕打ちを受けたりします。
めぐりとシンクロしている読者としては非常に許し難い気持ちになりますが、事件の顛末には溜飲が下がると共に、作者様の優しさが滲み出ていると感じ、穏やかな気持ちになれました。

また、片思いの孝蔵を思うめぐりの気持ち、めぐりに注がれる両親の愛情の深さ、小説を書くことを志すめぐりのひたむきさ、それを応援する親友の快活さ。
物語を通して人の思いの美しさが散りばめられており、読み進めるほどに心が洗われていくような気持ちになるのは、ひとえに作者様の真っ直ぐで純粋な人柄が物語の根幹にあるからなのだろうと感じました。

作者様の繰り出す突き抜けたキャラクターも、痛快なアクション活劇ももちろんおすすめなのですが、どこまでも純粋で美しい本作は、心の浄化にもってこいの読書体験を与えてくれる、珠玉の一品だと思います!

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