本格派にして心地よい読み口の推理もの。探偵業とサウナへの憧れが募る!?

富士山麓に住む、某フライドチキンのおじさんみたいな、
でっかい体に無邪気なハートを持つ若めなご隠居さんは、
かつては「筋読みの櫓竜」と呼ばれる凄腕刑事だったが、
引退と同時に、何かよくわからんことを始めてしまった。

「安楽椅子探偵がやりたい!」

まず舞台装置を完璧に揃えるという、形から入るタイプ。
本作の主人公にして櫓竜の娘婿、現職刑事の水田龍二は、
義父・櫓竜太郎の無駄遣いに頭を抱える。ああ嫁が怖い。
しかも冷え性の櫓竜、安楽椅子は寒すぎて推理も頓珍漢。

「こんなときはサウナだ!」

というわけで櫓竜水龍コンビでご当地サウナに繰り出し、
サウナと水風呂をまつわる蘊蓄を披露しながら体を解し。
すると唐突に、脳細胞まで活性化された探偵は宣言する。
「ととのいました」と。えっ、マジですか、お義父さん。

「全ての事件の謎は、サウナが教えてくれる」

安定感のある流れで展開する、短編連作形式の探偵もの。
テンポも雰囲気もいい、探偵と刑事の掛け合いが秀逸で、
どんどん読み進めてしまう。ぜひとも、続きをください。
サウナと水風呂の話も面白く、温泉施設に行きたくなる。

4セット目の動画配信の話、めちゃくちゃ好きです。

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