第18話 ニュースと逃走

『木村さん、殺しちまった』


 ……殺した? 


『あの人、俺とお前を殺すって言うから怖くなって、つい持ってたナイフで刺しちまった。やべぇ、どうしよう。俺どうしたらいい? もう警察に捕まるか、木村さんの仲間に殺されるしかねぇよ……』


 留守子の声には嗚咽が混じっていた。

 湿り気の帯びた懇願の後には、荒々しい打撃音が響いた。


 すかさず上がる女の悲鳴。

 乱暴な言葉を吐きかけながら近づいてくる男達の罵声。


『やべぇ、見つかった。切るぞ』


 留守電は、やはり唐突に切られた。


「これ、ヤバくね?」


 カンタの顔は引きつった笑みが浮かんでいる。


「タカシが人を殺したって、マジか? アイツ、そんな事出来る人間じゃねぇぞ。そりゃこの間会った時は、チンピラみたいだったけど話せば昔と変わらない面白い奴でよ……」 


「でもそう言う連中とつるんでたって事は、少なからずそう言う世界に足を踏み入れてたって事でしょ」 


「そんなわけ」と俺はすかさずカンタを睨んだ。


 いつのまにやら、カンタはノートパソコンで作業を始めていた。



 何か気になる事があったのか、インターネットで調べ物を検索し出したのである。


 回り込んで画面をのぞくと、ニュースサイトが開かれていた。

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トゥルルルル……! 羽黒 @haguroism

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