第17話 サバンナと殺害
次の留守電が19日最後のメッセージになる。
何が入っているのか緊張しながら、俺は画面をタッチした。
6月19日 23時43分。
『あのぉ、5時頃に中華そば頼んだ渡辺ですけど、まだですか?』
俺とカンタの声は綺麗に重なり、渡辺へツッコミが入った。
6月20日 00時12分。
『もしもしぃ、依子?』
「ああ、またタカシからの電話だ」
呑気にカンタは言うが、タカシはのっぴきならぬ状況へ追いやられつつあるらしい。
電話の声は、すっかり怯え切っており、涙混じりで必死に依子へ訴えていた。
『お前さ、何で連絡付かねぇの……。木村さん、スナックの事で話があるって。これ以上待たせるのヤベェよ、頼むから連絡くれ。俺達、サバンナにいるからさ……来たら連絡く――』
「また途中で切れたな」
カンタに頷いて見せたが、頭の中はサバンナと言うワードでいっぱいであった。
頭には昔テレビで見た大草原が浮かんでいる。
記憶が正しければ、サバンナとはアフリカ・南アフリカなどの熱帯、亜熱帯の草原地帯である。
動物園でもおなじみのライオンやゾウ、シマウマ、キリン、サイが生息しており、動物にとっての楽園。動物好きにとっては天国だ。
俺はガゼルやヌーなどの草食動物が草を食むところを、じっと低く身を屈めたライオンやチーターが狙っている姿を想像した。
……問題は、その中にどうしてタカシが混ざっているのか、だ。
疑問を残しつつも、次の録音を再生させるとタカシは息を荒く切らせながら話をしていた。
『依子ぉ、俺。やっちまったよ……咄嗟に、咄嗟だったんだ。わざとじゃねぇ、やろうと思ってやったんじゃないんだ』
まるで罪を言い逃れようとする子供のような台詞であった。
『木村さん、殺しちまった』
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