玉と石

 不条理である。結局、一番立場の弱い人間が一方的にああした形になった。貴族社会ではよくある話だ。
 語り部が自分ではそれと意識しないまま 真実に引き寄せられていくのと、作者の巧みな筆さばきが見事に融けあって、読者は スコットランドかどこかのヒースに覆われた丘に建つ古城を想像するかもしれない。 あとに吹き抜ける冷たい風はなにも語らない……。