配線工事

 戦前の和風自然主義小説さながらなお話だった。皮肉といえば皮肉な内容である。ある意味でアンデルセンの『人魚姫』をも連想させる。
 干からびた砂漠は過酷である。しかし、その砂漠でなければ生き延びられない存在もいる。主人公の悲劇は、自分は森や水辺が相応しいはずだと思い込んでいたところにあるだろう。それにしても、下級生は自覚のない小悪魔だ。普通、悪魔は芸術を守護するものだが、これは少し捻って芸術から外れた人間を糾弾する悪魔だ。主人公が、せめてオアシスにいきつけるよう祈ってやまない。