十六
僕は、遂に、きっぱりと、残酷にも、言葉にして、声に出して、凪に伝えてしまった。
「もう無理だ。俺はまだ結婚なんて考えられないし、これまでは凪の作り出す風任せに動いて来ただけだ。俺はもう凪に嫉妬することはないし、嫉妬されることは苦痛だ。ほら、無理だろう?」
「別れるん?」凪が他人事のように冷淡な口ぶりで返した。
それに対し僕は反射的に応じた。答えてしまった。確かにそれが正直な気持ちでもあった。
「いや、別れない。俺は今でも凪といっしょにいることが楽しくてしょうがないんだ」
「わかった。別れる」
静寂の中、年代物のキッチンの蛇口だけが水滴を落とす音をシンクに響かせていた。
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