十九

 その後、全ての、祭りともいえる凪との関係を終えてから知ったのは、出水が当時、凪から僕との交際の諸々を相談され、彼女が僕の女性関係を心配していたこと。マンションの下から見張っていたあの男は凪が僕に付けた興信所の探偵だったこと(あれはマニュアル通りの対応だったのか、どうりで)。ラジオ局に届いた怪文書ファックスも当人はやり過ぎたと反省していたらしいが、凪の仕業だったこと。僕の仕事でさえ凪にとっては疎ましい存在でしかなかったのだろう。全てを知り得ていた彼を「さすがは出水」と感心はしても、出水がどこまで関わっていたかには興味がなかった。


 それよりも、あの養父を殺しに行った白昼の出来事は、どこからが現(うつつ)でどこまでが夢だったのかと、ぼんやり途方に暮れた。


 いずれにしても、たった半年間のほんの小さな話だ。

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