第2話:ドキドキ

窓から差し込む暖かく、眩しい日差しで目が覚めた。


「んむぅ〜!」


軽く伸びをして、直ぐにベッドから出た。結構寝起きはいい方。


いつも目覚まし時計はしないけど、いつも決まって朝7時に目が覚める。便利なカラダだ。


軽く髪を整えた後部屋の角のL字型のピンクの机の前に座り、ノートパソコンと据え置き型ゲーム機のGameStation《ゲームステーション》4の電源をつけた。


ヘッドセットを装着して、GS4のコントローラーを持ち、配信用のアカウントでログインする。そして最近流行りのFPSゲーム、Darkops《ダークオプス》のディスクを入れて起動した。


それと同時にパソコンの方で配信ソフトを起動して、左斜め前にあるカメラと映像と、ゲーム画面をリンクさせた。


全ての準備が完了した。


私は開始ボタンをクリックして、配信を始めた。


「みんなおはよー!今日も朝から元気に配信していくよー!」







私は市立神澤高校に通う、今日から3年生の、音琴ねごと愛花あいか


趣味で毎朝ゲーム配信をしてるただのゲーム好きの女子高生。今はcat-eye《キャットアイ》という名前で配信活動してる。


夢は配信で有名になって、プロゲーマーになること。


とは言っても、配信も最近始めたばかりでまだまだ無名だし、有名になる兆しはまだ見えない。


でもそんな私にもいつも見てくれるリスナーさんが1人だけついてくれた。


(この調子でもっとリスナーさんが増えるように頑張らないとね。)


私はそう意気込み、後ろから来た敵にやられた。


「なんで敵そっちから来てるのぉおぉぉぉおお!?!?」




〜40分後〜




「はい、ということで今日の配信はここまで!いってらっしゃ〜い!」


そう言い、配信終了ボタンをクリックした。


「今日もあんま人来てくれなかったな。」


ちょっと残念に思い、天井を見上げる。本当に有名になれるのか不安になったからだ。


まだ配信を始めて2ヶ月程だけど、リスナーさんは一向に増えない。


「なんでだろうなぁ〜。」


そう物思いにふけて、1人で呟き時計を見ると、8時15分だった。


「えぇ!?もうこんな時間!?」


前までだったら時間は余裕だったけど、不運にも今日から学校が始まる。私も今日から高校3年生になる。


私は急いで制服を着る。久しぶりに着たからどこかおかしな所がないか、立ち鏡の前でチェックする。


「時間ないけど、これだけはねー。」


女の子にとって制服チェックは欠かせない。


チェックを終えた私は鞄だけ持って急いで家を飛び出た。







8時16分に、走る私の長い髪が風でたなびく今日の朝。私は今日から高校3年生になる。


前までの様にゆっくりのんびり登校しようと思っていたのに…。


「なのに…はぁ…。初日から走る事になるとは思ってなかった…はぁ…はぁ……。」


不覚。今まで遅刻どころか学校まで走っていくなんてことして来なかった。なのに、春休み明けの、久しぶりの登校という事で油断してしまった。


幸い家から学校まではまあまあ近い距離なので、このペースで走り続ければ学校には間に合う。


ただ、体力的にかなりしんどい。


私はやがてへばりそうになってしまった。


「はぁ…。はぁ…。やっぱしん…どい…。はぁ…。」


徐々にペースが落ちてきた。足が重たくなってきたけど一歩一歩確実に進んで行く。


ようやく学校が見えてきて、私は門を閉めようとしていた体育教員の池上先生をスルーして、そのまま学校内へ走って入った。


「間に合った…!!」


「まっ………にあった〜!!!」


私の左隣から同じようなセリフが聞こえた。


ちらっと見てみると、制服の柄からしてここの学校の男子生徒だった。


(この人も遅刻ギリギリなんだ…。ペナルティ嫌だもんね。)


なんてことを考えてその男子生徒の顔見てみた。


めちゃくちゃかっこいい。


真面目そうで、でもちょっとやんちゃそうなその顔と雰囲気はまさに私のタイプだった。


私は我に返り、悟られないように下を向いて必死に疲れているふりをした。


キーンコーンカーンコーン。


チャイムが学校中に鳴り響く。まるで彼と私の2人だけの世界のような感覚に陥った。


私が勝手にそんな余韻に浸っている中、彼が私の方を見てぼそっと呟いた言葉を聞か逃さなかった。


「か…かわいい…。」


[ドキッ]


何、この感覚。胸が急に締め付けられるような。こんな感覚初めて。


胸に手を当てると心臓がバクバク激しく脈打っている。


さっきまで走っていたけど、こんなにも心拍数は上がらなかった。


「はぁ…はぁ…はぁ…。」


胸が苦しくなってきて息が上がってきた。


「おーい、早く教室入れよ〜!今日は始業式だぞ〜!」


そんな私を無視するかのように、後ろから池上先生の声がした。


しかし今の私にはそんな声なんて気に留める余裕なんてなかった。


私は、彼が足早に学校の玄関に入っていく後ろ姿を見て確信した。


「これが…恋。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

好きなあの子はプロゲーマー 遊津レイ @asozu_rei

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ