好きなあの子はプロゲーマー
遊津レイ
第1話:出会い
ジリリリリリリリリリリ。
朝7時30分の目覚まし時計で目が覚める。
うるさいなぁと思いながらも重たい体をのそっと起こし、両腕を思いっきり突き上げて伸びをする。
「ふわぁ〜。」
やっぱり朝イチの伸びは最っ高に気持ちいい。
俺は目覚まし時計を止めて、眠い目をこすりながらベッドから出て、重い足取りで洗面所に向かった。
蛇口をひねって水を出す。その水を手で受止め思いっきり顔にぶち当てた。
ひんやり冷たい水を顔全体で受け止めた瞬間に一気に目が覚めた。
まるで、まだ眠い自分自信を冷たい水が洗い流してくれるような感覚だった。
水を止め、横にかかっているタオルを手に取り顔を丁寧に拭く。
鏡に映った自分の顔を見ると、寝起きの顔とは打って変わってさっぱりしたような感じだった。
顔を洗い終えた俺はいつものように自分の部屋の勉強机の上に置いてあるノートパソコンの前に座り、電源をつけ起動する。
ホーム画面に映ったのは、俺と歳が近いであろう可愛らしい猫耳をつけた女の子だ。猫の手のポーズをしている。着ている服はピンクと白のシマシマのダボダボのパーカー。萌え袖をしているのが最高に可愛い。
そんな彼女は、俺が今1番推している個人で活動している女性配信者、
俺はその
毎日このためだけに朝早くに起きているんだ。
俺は彼女のチャンネルにアクセスして動画を再生した。
〜40分後〜
配信が終わった。見終わったあとの感想はやっぱりこうだった。
「可愛いしゲームうめぇ〜!」
やっぱり可愛い。敵に倒された時の反応とか、逆に敵を倒せた時の喜び方なんかを見ているだけで幸せになってくる。
暫くの優越感に浸り、ふと時計を見てみると、針がもうすぐで8時15分を越えそうになっていた。
「うわ!?やっべぇ遅刻だ!」
彼女の配信はいつも30分くらいで終わるのだが、今日は少し長引いてしまっていた。
そして、残念なことに今日から新学年として学校に行かなければいけない。
俺は急いで制服に着替えて、下に降りた。
机の上の皿の上に食パンが2枚置いてあったが、無視して玄関に向かった。
急いで靴を履く。かかとを踏んでいるが、気にせずドアを開け、家を出た。
俺は市立神澤高校に通う、今日から3年生の
小学校、中学校と何事も無く平凡に進んで普通の高校に入学して、何も考えずにぐーたら普通の高校生活を過ごしていたら、気がつくと3年生になっていた普通の男子高校生だ。
ただそんな普通な俺でもひとつだけやってこなかったことがある。いや、やれなかった、と言ったほうが正解だろうか。
"恋愛"だ。
俺は今まで恋愛をしたことがない。男友達とつるんでいたら恋愛する機会をすっかり逃していた。
ただ、俺自身恋愛なんてしようとは思わない。自分の娯楽の時間が減るのが嫌だからだ。
家で1人でゲームしたほうがよっぽど良い。それか、
これまでも、そしてこれからも俺はそうやって生きていくのだろう。
「な〜んて1人でかっこつけてる場合じゃねぇ〜!」
やばい。間に合わない。ずっと全力疾走だが間に合う気がしない。
俺が通う学校は家から徒歩20分、走って10分かからないくらいだ。近いというだけで選んでしまった学校だが、自転車通学が出来るのは部活に入っている人限定だなんてのは盲点だった。
そんな過去の自分を恨みつつ、走る、走る、とにかく走る。走りまくる。
息が上がってふくらはぎが痛くなり、徐々にペースが落ちてきた。寝起きの体にはしんど過ぎる運動だ。
言い忘れていたが俺はこの学校を選ぶ時にもうひとつ見落としていたことがある。
遅刻のペナルティがキツイ。
シンプルにきつい。なんだよ、体育館の雑巾がけ2往復って。うちの体育館結構広いんだが!?しかも反省文まで書かないといけないとか意味わかんねぇ。なんでちょっと遅刻したぐらいでこんなにもペナルティがきついんだよ、と愚痴を垂らしつつもやはり足は止められない。
走って走って走り抜いてやっと学校が見えてきた。だが門を見ると、まさに今体育教員が閉めようとしていた。
「はぁ、はぁ、ま、待ってくださ〜い!!」
もう間に合わないと思い、俺は今持てる体力全部使って門に向かって走った!
「まっ………にあった〜!!!」
「間に合った…!!」
右から同じセリフが聞こえた。
見てみると黒髪ロングの清楚な女の子だった。ここの学校の制服を着ているので、ここの生徒で間違いない。
キーンコーンカーンコーン。
チャイムが学校中に鳴り響く中、俺はその子に見とれてしまった。
「か…かわいい…。」
しまった。つい口から思ったことが出てしまった。でもこれは仕方がない。めちゃくちゃ可愛いいのだから。
ちらっと女の子の方を見てみる。
「はぁ…はぁ…はぁ…。」
幸い女の子の方も走り疲れていて、俺の言葉は聞こえてないみたいだ。ボソッとで良かった。
「おーい、早く教室入れよ〜!今日は始業式だぞ〜!」
後ろから門を閉め終えた体育教員の声が聞こえた。
俺は女の子の顔を見ないよう、そして向こうからも見えないように背中を向けてそそくさと教室に戻った。
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