求めていたところに届くかどうかはまた別で

「文学性の女」というタイトルから、初めは感受性豊かなヒロインが私的情緒に溢れた作品を書きまくるか、書けなくて悩むかという展開を予想していた。

浅はかでした。

スポンジのように色んな物事を受け入れるヒガシダに、スギモトは初めに言っているのだ。
「あなたには文学性があるかもしれない」と。

どんなにバイオレンスな状況を語られても(見ても)、トキトオさんの傷を愛撫し吐息だけで絶頂に達し合おうとも、『僕』ことヒガシダは「現実を受け入れ、文学に還元することが出来る」男。
永遠の「読者」になれる男。

それが、才能や未来に失望し、でも希望を捨てきれず不安定になるスギモトや、苛烈な状況(だがそのままでは文学にはならない)を背負うトキトオさんにとって、どれだけ救いになるか。

作者自身が一番ご存知だろうが、読者もため息と共に納得する。
そしてもう一度読みたくなる。

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