財布のあとさき

 山下和美先生の『天才柳沢教授の生活(講談社)』で、主人公の柳沢教授が奥方に無断でパソコンを買い、嘘をつこうとして結局正直に喋って怒られる下りがある。本作の主人公は買うべきか買わざるべきか……ではなく買ったあとか買う前かで悩むタイプなのだろう。恐妻家はすべからく哲学者だ。本作で主人公が開陳するところの家庭哲学には微苦笑を禁じ得ない。結局のろけで終わるのがまた良い。夫婦善哉。

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