おまけ

登場人物


【ウェス・ターナー】


 湖水地方出身の発明家・科学者。これも有名な技術者であったヴィンス・ターナーを祖父に持つ。スタン・キュラムの親友。光走船に乗って玉座を追う。女王サルキアお抱えの科学者となり、シェストラに発展をもたらす。名前はウェス・モンゴメリとウィリアム・ターナーから取った。



【スタン・キュラム】


 ウェスと同じく湖水地方出身の少年。逞しい肉体に恵まれ、水上レースや櫂術の大会にて優秀な成績を収める。ウェスとの旅の途中で竜と邂逅し、竜紋の候補者となる。のちにシェストラ海軍の提督となる。映画監督・故スタンリー・キューブリックの名前の響きにをもとにした。



【レイゼル・ネフスキー】


 北部の領主。コギト犬たちと犬橇で玉座を追う旅に出る。女だてらに狩りと戦いに秀で、荒くれ者の多い北の男たちを心酔させている。女王であったリゼアの弟ルパートが実父であり、サルキア同様王位継承権を有する。スタン同様、竜紋を授かる。左右の足のサイズが2センチも違う。



【ベイリー・ラドフォード】


 武門の子弟にしてシェストラ臨時政府の総督。逆賊イルムーサを討ったことにより救国の英雄となるが、玉座を追う旅にて死亡。竜紋の候補者。サルキア殺しを命じたが、そのことにより自責の念に苛まれる。蒸気式装甲車9型を駆る。年上の女性が好み。



【ガラッド・ボーエン】


 南部の元農奴。己の才覚によって自由の身となる。ガラッド商会の会長。同じく農奴であったジヴを解放して商人となる。草刈り機を改造した大喰いと呼ばれる乗り物で玉座を追跡する。後に南部自治領ガラテアの初代議長となる。入浴時は脇腹から洗う。



【ルードウィン・ザナック】


 ベイリー・ラドフォードの右腕として数々の戦地を巡る。王都奪還の立役者のひとりだが、総督代理の地位に飽き足らず、ベイリーを暗殺しようと目論む。盤上遊戯と手芸、鳩の飼育が趣味。また変装への強い嗜好がある。背が低く童顔だが、ナイフ捌きは一流。飛行船ウィースガム号で玉座を目指したが失敗。かに座。



【サルキア・ラヴェンデ】


 王弟スパイラの娘。レイゼルとは異母姉妹の関係である。物心つかぬ年齢にして僭主イルムーサの傀儡となる。ベイリーのクーデター時に薬殺されかかるが、生き残って王都を逃れる。オアシスの街レヴァヌの娼館にて下女して雌伏の時を過ごす。使い道のない絶対音感がある。



【ヴェローナ・リジュイー】


 ナドアの里出身の暗殺者。癒しの右手を殺しの左手に矯正された過去を持つ。尋常でない戦闘能力、中でも射撃と投擲の技は飛びぬけている。ルードウィンを介してマイルストームに雇われる。ベイリー暗殺に失敗。ガラッドたちと行動をともにする。座右の銘は「真実一路」



【ジヴ】


 つむじ風(リヴィロー)の異名を持つ元農奴。滅法喧嘩が強い荒くれ者で酒を飲むと狂暴になるが、普段はいたって冷静。ガラッドに自由の身にしてもらったことに恩義を感じ忠誠を誓っている。地図と星を読むことに優れる。ガラッドとの旅で出会ったサルキアと結ばれる。蛾の鱗粉アレルギー。



【マイルストーム】


 砂漠の街レヴァヌで灼熱の血盟団を結成。群雄割拠の乱世に乗じて名を上げようとするが、ベイリーに破れ、処刑される。いびきがうるさい。



【ネイロパ】


 ナドアの里出身の預言者。マイルストームの参謀でもある。



【クローパ】


 ナドアの里の異言使いの女。ネイロパの母。



【ウルスラ・ディンケラ】


 ルードウィンの秘書官。野心に満ちた士官。ルードウィンとともにウィースガム号に乗船。自分の肘を舐めることができる。



【メリサ】


 悪魔の中指の乗組員。メカニック担当。竜紋の候補者をサポートする秘密結社〈寄合〉に属する。ベイリー亡きあとはスタンに仕える。バツ1。



【ゼロッド】


 悪魔の中指の砲撃手。ベイリーに心酔している謹直な男だが、ルードウィンの策略によってベイリーを裏切る。6歳まで言葉を話さなかったという天才にありがちなエピソードを持つ凡人。



【ルゴー】


 ナローの双子の弟。兄が好き。



【ナロー】


 ルゴーの双子の兄。弟が好き。



【クラリック】


 悪魔の中指の乗組員。医師。ベイリーの命令を破って、少女サルキアを助けた。心優しい内気な男。ストレスが最高潮になると瓶の中に模型を組み立てる。



【トライロキヤ・ヴルーマン】


 古代都市ロドニーの宮殿に住む、不思議な男。レイゼルに執着し、娘として扱う。年齢不詳で謎が多い。リアムの時代に竜紋を授かり玉座の力によって不死の身体を得た者であるとの説もある。補助後肢によりケンタウロスのような姿になっている。



【ルパート・ラヴェンデ】


 女王リゼアの弟。北部に肩入れしたことによりリゼアと衝突。ベイリーの父クライスとは北の待遇をめぐる対立があった。レイゼルの母と情を交わしていた。女の涙に弱い。意志薄弱なイケメン。



【クライス・ラドフォード】


 ベイリーの父。晩年は不遇で、無念の死を遂げた。



【シュローク】


 娼館〈宵の蜃気楼〉の支配人。実はサルキアの侍従長であった。マイルストームの死後、自害。



【アーロン】


 ロドニーの宮殿を守るセキュリティ・アンドロイド。聞く耳もたず侵入者を攻撃する。ラトナーカルに破壊される。



【ジャックス】


 アーロンのもうひとつの人格。こちらは気さくな性格をしており、物分かりもいい。首だけの状態でウェスたちに同行。のちに旅芸人たちに加わり、ウェスたちの旅の語り部となる。機能停止後、葬られた場所は「ジャックスの首塚」として子供たちに人気の心霊スポットとなる。



【ダーシュワイ】


 見習い彫り師。泥酔したマイルストームに竜紋まがいの刺青を彫った。命を狙われ逃げ出したところをウェスたちに拾われる。重い物を持つとなぜか小指が立つ。



【バローキ】


 レイゼルの右腕。怪力の持主で勇敢な戦士。口下手。スキップができない。



【イダー】


 ナドアの族長。口が悪い。


【イルムーサ】


 女王リゼアに取り入った宮廷美容師。美と虚飾の化身と呼ばれた宦官。女王の生前から念入りに根回しをすすめ、やがて女王の死後は公女サルキアを傀儡とし、王さながらの権力を振う。あまりの暴政に軍部がクーデターを起こし討たれる。追い詰められたイルムーサは古代機械を作動させ、玉座を疾走させる。


【リゼア】


 女王サルキアの叔母にあたる。イルムーサに付け込まれたあげく、早世する。若さと美貌を保つことにしか関心を示さず、数々の男と浮き名を流す。



【ラトナーカル・猿】


 ドッジ森林地帯に住む道化猿だったが、ウェスたちに旅をすることになる。たわむれに竜の名をつけられることで未知の成長を遂げた。サルキア女王の御代において絶大な人気を誇る絵本『竜猿ラトナーカルの冒険』のモデルになった。ウェスのペットであり護衛であり共同研究者でもある。



【ラトナーカル・竜】


 最後の竜。フランケル山脈の頂上付近でスタン、レイゼル、ベイリーの三者に竜紋を授ける。雪にまごう白い体表に隻眼の姿。ウェスたちにまみえると、未来を予言しどこかへ去ってしまった。名前はインドの叙事詩ラーマーヤナの編纂者ヴァールミーキの元の名前を頂いた。


【ハゼム】


 シェストラ王国の開祖。竜紋と玉座によって王となった。子孫であるサルキアの精神に干渉する三千年以上も前の人物。言い伝えや壁画に描かれる姿ほど颯爽とした偉丈夫ではないが、笑顔がキュート。



■雑感


 こうしてめぼしい登場人物を並べてみると、その数の多さに我ながらびっくりする。冒頭にウェスの名前が来るのはやはり彼が主人公だからであろう。ウェス・ターナーこそは時に陰惨な群像劇になりながちだったこの物語を、当初の企図通り冒険活劇に引き戻してくれる存在だった。


「疾走する玉座」に陽性の明るさがあるとしたらひとえにウェスのおかげである。キャラクターたちはすべて作者の分身でもあるが、ウェスは陽キャなオタクというもっともバカバカしいポジションを担ってもらった。ありがとう。


 個人的にはヴェローナが好きだ。物語のパワーバランスを壊すほどの戦闘能力は扱いに苦労した。誰も勝てそうになかったのである。仕方なく悪魔をぶつけたが、それも退けてしまったのではもはや打つ手がない。とうとう作者は匙を投げ、彼女を彼女自身の運命に委ねることにした。


 そしてベイリー。最後の最後までベイリーとルードウィンのどちらを生かすか、つまりどちらを殺すべきか決められなかった。狂気の果てに滅ぶべきだったのはルードウィンの方だったが、それはどこか予定調和めいている気がした。苦吟の末、作者はベイリーを葬った。しかし、遺骨の見つかっていないベイリーはことによると生きているかもしれない。




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疾走する玉座 十三不塔 @hridayam

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