この物語をなんと説明したものか。たった一万文字の中に無辺の世界が広がっていて、私の拙い解説など無用ではないかと思えてくる。しかし未読の諸氏を啓蒙するため、なんとか言葉を絞りつくしてみよう。
これは、とある稀有の遊具に関する物語である。古代の帝王が寵姫のために作り上げた遊具、「花嫁のふいご」。ギリラーシュ帝の御世にあって多くの民を楽しませたそれは、帝国の崩壊後は恐るべき拷問器具へと姿を変える。さらに次の時代においては過去の過ちの象徴として保存され、地底人にとっての二つとない宝物となり、地の軛から解き放たれ、そして、そして……。
この短い物語の中で、世の時代は次々に遷り変り、人類もまた変化を余儀なくされる。その変化を、私という読者は「花嫁のふいご」という乗り物の中から余すところなく観察した。さあ、次はあなたがこの稀代の遊具に乗り込み、時代の変遷を目の当たりにする番だ。