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『移眠の夏』応募への経緯。

ここに近況を記すのは久しぶりです。
あまり見ない間にカクヨムもかなり仕様に変更もありましたね。
それでもやはりホッとするプラットフォームでもあります。
思えば、ハヤカワSFコンテストに応募した『ヴィンダウス・エンジン』でここカクヨムで書いたのでした。まさしくホームという感じです。

この度、個人的に思い入れのある『移眠の夏』という作品をカクヨムコンテスト短編賞に出すことにしました。これはSF作家クラブ主催のちいさなSFコンテストの第2回に応募したものです。ありがたいことに最終選考まで残ったのですが、残念ながら受賞には至りませんでした。自分としては手応えもあり、みなさんのよい反応も頂いていたこともあり、埋もれさせるのはもったいないと考え、ここに加筆修正のうえ応募することにしました。

https://kakuyomu.jp/works/16817330668300307962/episodes/16817330668300343765

それともうひとつ、この作品にはあるモヤモヤした感情がまといついています。
実はこの作品をさなコンに応募したことであるプロ作家の方からお叱りを頂いたのでした。曰く、あなたはすでにプロデビューしているのだから、このようなランクの劣るコンテストに応募するべきではない、ハヤカワSFの受賞者である人間が、ここで敗退すれば、せっかくのブランド力を下げてしまうことになる、そういった旨のお話でした。

しかし当時の(いまもですが)私は一寸先は闇で、ハヤカワで優秀賞を頂いたからといって次の単著が約束されているわけでもなく、なんとかして露出を高め、自分お名前を広めたい気持ちでいっぱいでした。またその方がデビューされた賞とハヤカワの賞はかなりカラーも違いますし、デビュー後の置かれた立場も同じではありません。

したがって私はデビューしたとはいえ、できるだけ多くのチャレンジを自分に課しました。これは過去に純文学でデビューしたときに自分から積極的に持ち込みや営業をせずに作家としてのキャリアを放棄した自分への反省でもありました。このようなムーブは正しいとは言い切れないでしょう。軽率かもしれません。ブランド力を下げると言われればそうかもしれません。しかし私は過去のあの時のように動かずに終わりたくはなかったのです。

もちろんハヤカワへ企画と持ち込むなどの活動と並行してですが、私はkaguyaSFコンテストなどにも作品を応募しました。これもその先輩作家の方から見れば軽はずみな行為と思われるかもしれません。でも、その結果にわたしは後悔していません。これも最終選考に残り、多くの人の目にとめて頂くことができたからです。また多くの素晴らしい人間関係も得られましたし、『新月』という最高のアンソロジーに加わることもできました。あの時kaguyaSFコンテストに参加していなければ、私の作家生活はもっと貧しく味気ないものになっていたでしょう。

だからさなコン2に参加するのにもためらいはありませんでした。作家クラブに所属したばかりでもありましたし、プロアマ参加オッケーのレギュレーションでしたので、少しでも盛り上げられたらと考えたのです。もちろん審査員の方からしたら同じプロが参加すれば、ジャッジはやりにくくなるかもしれません。また他の参加者からも煙たがられる可能性もあります。

しかし私はそういう些末なあれこれを超えて、どんな立場の人間であれ、コンテストというものはよい作品であれば認められるし、ましてや参加そのものを咎められることは絶対にあってはならないと信じています。もちろん最終選考で破れたことにも何の恨みもありませんし、精一杯に楽しみました。

先輩作家の言い草で、もうひとつ引っ掛かったのは、コンテストのランク云々でした。私はさなコンがハヤカワSFコンテストよりランクが低いとは思っていません。予算や規模は違うでしょうが、それぞれの志のもとに運営されておりそこには貴賤もなければランクもありません。

それまでまったくといっていいほど関係性のなかったその先輩作家からの老婆心を装ったメッセージにわたしはひどく暗い気持ちになったのをおぼえています。あのときは反論せず、ご助言に感謝しますと平穏にやり取りを打ち切りましたが、このことを思い出しては、うきうきと執筆した『移眠の夏』がちょっぴり不憫になるのでした。

ですので、今回カクヨムコンに応募したのは、かつてのモヤモヤを振り切るためでもあります。ここでひとりでも新しい読者を得られれば、この作品がもう少し自由で幸福になれると思ったからです。

どうぞよろしくお願い致します。





2件のコメント

  • 何だか勇気の出るノートでした、ありがとうございます。
    恥や後悔よりも納得が優先されるべきです、十三不塔さんの選択を一字書きとして支持します。
    スティーブン・キングもJ・K・ローリングも、何度否定されても作品を持ち込んだのですから、作家に必要なのもプライドやブランド以上に機会に挑戦し続けるガッツだと思います。
    ジャンルは変わりますが、世界的に人気コメディアンとなったとにかく明るい安村も、昔からやっていることがほぼ変わりませんが、マイナーチェンジをして活躍の場所をYouTubeやブリテンズ・ゴット・タレントに移して評価されたのです。
    単純に挑戦し続ける者こそが成功するのだから、何も疑問に思うことはないです。内輪で通じ合うだけのみっともなさだとかに尻込みする方がずっとかっこ悪いと思います。
    それにブランド力云々に関しても、プロでさえシビアに審査されるという、むしろコンテストの説得力になるし、若い字書きが発表の場所を選ぶ参考にもなります。十三不塔さんの行動がマイナスになることなどないと私は思います。
  • コメントありがとうございます。こちらこそ勇気づけられました!
    あらゆるもっとらしい正解とヒントが飛び交っていますが、最終的には自分で納得のいく道を選ぶほかないのでしょうね。

    まだまだチャレンジをやり尽くしているとは言い難いですし、行動を起こせない場面もたくさんあります。ですが、鳥海さんのお言葉はきっとずっと胸に残り続けると思います!!!

    どこまで行けてどこまで届くかはわかりませんが、これからもジタバタしてみたいと改めて思いました。心より感謝致します。
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