第2話 湯上がりにて

湯上がりしたばかりなのでしょうか、彼女は火照った顔を浮かべ、旅館の外にあるベンチに腰掛けていました。


 霧雪混じりの朝日に照らされ、彼女の艶々した黒髪は輝きを増しています。


 別段、髪フェチだとかそういう訳ではありません。


 ただ、どこか儚げな彼女を眺めていると、無性に猟奇的な感情に駆り立てられるのです。


 狂気をとうに通り越し、猟奇的なのです私は。


「彼女に触れたい」


 だんだんと鼻息が荒くなってきました。


ポケットから離れた手は一体何をしでかすのでしょうか。


 下唇を歯でなぞり、少し凸凹した唇の感覚に身を委ねます。 



 どなたか手を叩いて頂けませんか。


私だけではどうも踏ん切りがつきませんから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

事件は温泉にて @seiya1947

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ