事件は温泉にて

@seiya1947

第1話 氷灯篭にて

 毎年、十二月下旬から一月末にかけて五台橋では氷灯篭が灯される。


文殊堂まで伸びる無数の氷灯篭は実に幻想的で、本格的な冬の訪れを感じさせてくれる。


 

「うん、なかなか風情あるね、ケンちゃん」



 俺の数少ない友人であり、温泉への良き理解者でもある相川学は白い息を吐きながらそう呟いた。


 

「ああ、風情はもう充分感じただろう」


「じっとしてたら寒い、早く温泉に浸かりにいこう」

 


 急かすと同時に小走りになった俺を呆れた様子で学は追いかける。

 

 氷に囲まれた蝋燭の火は今にも逃げ出さんとばかりに忙しなく揺れている。


霧雪がしんしんと降る中、蝋燭の火は未だ灯る。

 

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