机のひきだしから現れたのは、ドジっ子気質の天使、いや、自称キューピッド

 不思議なことがままあるこの街で暮らす、誰もいないはずの主人公の部屋に、白いワンピース姿で、青みがかった銀色の長い髪を持つ、ほっそりとした少女がいた。
 幽霊、ではなさそうだ。

 最初に遭った人間を幸せにする、というのがわたしの目的なのですからっ! と、もっともらしい理由を語っているが、実際は、ただの迷子の様相。
 冷静に、状況を見極める主人公に対して、次第にしどろもどろになっていく、自称キューピッド。

 やがて、最初の目的に立ち返ろうと奮闘するのだが……。お約束のとおり、失敗を繰り返していく。

 主人公の周囲、その複雑な関係が少しずつ明かされていく中、ついに、命題の運命に辿りつくのだが……。

 いろいろな物語の伏線部分が集まったようなこの物語は、これ単体でも、用意された素敵なラストに納得できる。
 結末は、せつなくも少し暖かさを感じる。これは、素敵な掌編 なのかもしれない……。