高知より愛を込めて

 私は九歳まで鳥取県で過ごし、それから家族と共に高知県に引っ越した。一度上京したがまた戻ってきて、それからずっと高知県民である。
 今は亡き司馬遼太郎先生のご作品は、『竜馬がゆく』と『馬上少年過ぐ』しか明確には読んでない。しかし、前者は非常に大きな影響を私に与えた。
 そんな訳で主人公には大いに共感できる。交通の便が決して良くない高知県で、空港から土佐市まで進むのはかなりな難儀だったろう。たっぷり二時間近くかかる。それだけの苦労を経ただけに、浜辺でのひとときはまたとないご褒美だったに違いない。達者な筆さばきで主人公の心の動きが手に取るようにわかる分こちらも清々しくなった。
 ただ……『高知式接待法』には注意されたい。今はずっと穏やかになり誰でも受け入れられるようにはなったのだが。