静かな水の底で、息を潜める人々

生物である以上、ヒエラルキーの中で生きるしかない。
でも、人間は他の生物ほど厳格で救いのない関係ではない。

だからこそ、辛いのかもしれない。
いじめられる自分が悪いと分析も納得も出来るが故に、無力感と希望の無い現実に打ちひしがれる。

美結も榎本さんも文も、全員それが分かる弱くて優しい人間だから、その行く先を願ってやまない。今いる場所を沼と表現していたけれど、いつかその淀みが澄んだ世界で、静かに暮らして欲しいと思った。

人が持つ脆さ、儚さ。それが残酷なほど綺麗に表現されている切ない物語です。