第二節

「上原さん?」

 何度目だろうか。

 この踊り場から動かずに、ビデオカメラの映像を確認し続けていた時。

 携帯が鳴った。

「あ! 加藤くん! 大変だよ!」

 電話に出ると、上原さんが興奮気味のしゃがれ声でそう言った。

「どうしたんですか?」

「大変な事になったよ! ついさっき、警察関係の知り合いから連絡があったんだけど、タカハタが指名手配されることになりそうだ!」

「えっ?! 本当ですかっ?!」

「ああ! これから警察が本格的に動き出すはず。だけど、タカハタはすでに逃亡を図っているみたいだね、すぐに捕まればいいんだけど」

「え?」

 俺は、さっきから見続けていた映像を思い出した。

 何度見ても、変わらない。

 間違いない。

 そして、導き出された答え。

 あの男は……。

 タカハタと思われる男は……。

……1301号室に……まだ……いる……。

 俺はビデオカメラを一瞥すると、大きく息を吸い込んだ。

「俺……タカハタの居場所……知ってるかもしれません」

 そう言って、1301号室の方を凝視した。


                                          了

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

フロアーⅩⅢの深層 百十 光 @hyakuto110

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ