5.おわりに
さて、最後にちょっと横道にそれます。昨今、良くこんな言葉を聞くのではないでしょうか。「消費離れ」。
この言葉。まあ理屈を色々つけるのは割愛して結論だけ言えば大きな間違いであると自分はある程度の確信をしております。「売り手の消費者離れ」であるというのがきっと正しい理解なのでしょう。
物が売れないとされる昨今ですが、基本的に「歴史的大ヒット」はバカスカ出ています。これは業界に限らない話で、フィジカルなモノ(CDとか)が売れない売れないと騒がれる一方で、イギリスの歌手であるアデルの「21」というアルバムは歴史的な売り上げを記録しています。
日本に視線を移せばドラマ「逃げ恥」(『逃げるは恥だが役に立つ』)の最終話が歴史的な視聴率を記録したのはまだ記憶に新しい所です。アニメなどを取り上げるのならば「君の名は。」を語らないわけにはいかないでしょう。物が売れないなどという時代にこれだけのメガヒットが連発しているのです。何故なのか。
ちょっと専門的な話になりますが、音楽業界では今ストリーミング配信で聴くというスタイルが一つ出始めています。
そして、そのスタイルによって「過去、歴史的に評価されてきた音楽」と「今、ちょっと出てきた音楽」は、ともすれば「あなたへのおすすめ」という形で一括紹介されます。そこには専門的解釈はなく、等価的に消費されている。そんな時代になっているという学問的な理解があります。
そして、その理解はこと小説を含めた他ジャンルでも例外ではないのではないか、と思います。
娯楽がただでさえ多様となった今「これを読んでおけば安心」という物はほぼなくなりました。
漫画文化であれば「ジャンプを読んでおけば、みんなの話についていける」という事もあるいは無くなっているのではないかと思います。
そんな中で「どれがいい作品なんだろう」という指針が無くなり、結果として「上手い具合に流行った作品」を見つけ、「これ見ておけば取り敢えず安心だ」という無意識か意識してかの心理の元、空前のビッグヒットが生まれてくるんじゃないかなぁというのが個人的な解釈です。
そんな中で、これを読んできた「読み手」は非常に大事です。
いい作品をピックアップし、紹介し、的確に届けていく「評価者」は、恐らく今後の時代に求められていくのではないかと思っています。
例えばそれは作品へ誘導するアンテナサイトであるかもしれないし。「このマンガがすごい!」のようなランキングであるかもしれません。その中に「この人が勧めた作品は絶対読んで損をしない」という評価者は間違いなく含まれるのです。
自分も作品を批評したりしてきました。しかし、本質的に書き手であることが好きなのか、やっぱり書く方に回ってしまいました。だから、これを読んだ誰かが、作品を救い上げて、別の誰かの「信頼できる評価者」になったら、きっと、「消費離れ」などという誤解すら生まれない世界に一歩近づくのではないかと、そんな夢を思い浮かべながら、今回は筆を置きたいと思います。
【ざっくりポイント纏め】
・「消費離れ」は「売り手の消費者離れ」
・類を見ないメガヒットは「何を選んだらいいのか分からない」が故の一極集中
・「これがいいよ」と教えてくれる「評価者」はこれからどんどん重要になっていくのではないか
カクヨムの歩き方 蒼風 @soufu3414
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