インディアナポリス問題 その二

では『輝きの七日間』はどこがインディアナポリス問題に引っかかったか。

 この小説の中には、オーストラリアの食肉業者がでてくる場面がある。オリオノンの地球到達によって、人類は一時的に動物の肉が食べられなくなる。すべての人間が動物を殺すことに嫌悪感を覚えるようになるからだ。もちろん、人間が同じ人間を殺す行為にも強烈な嫌悪感を抱く。そうして地球全土で反戦気分が高まり、多くの人の戦争が同時に終結する。しかし、この期間はほんの七日間。人々はこの期間を少しでも長持ちさせようと、必死の努力をする……。

 自分で言うのもなんだけど、感動的な話だと思う。

 連載中に担当編集の方からメールで、書き直しの依頼があった。食肉業者がでてくる場面で、このシーンだけを読んだ読者が差別表現だと誤解するのではないか、というのだ。それはもっともだと思ったので、僕は数ページだけ削除することに同意した。当然、連載が終わったら、削除箇所は修正してもらえるものと思っていた。

 しかし、連載が終了し、削除箇所を元に戻そうとしたら、早川書房はそれを拒否してきた。削除は認めない、というのだ。


 僕はその要求にがんとして応じなかった。

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山本弘のリハビリ日記 山本弘 @hirorin015

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