勇者の名を背負った、ひとりの「孤独な」少年の話。
- ★★★ Excellent!!!
中を見れば、その伏線や情景描写はもちろんのこと、こちらが引き込まれざるをえないほどの描写力と細やかな心情に圧倒されるのだ。
題名はライトらしくなっているが、そこに騙されないでほしい。
たしかに要素はライトのものなのかもしれない。
「少年」「勇者」「無双」「俺TUEEE」のような。
だが、その軸を覆してしまうほどに、彼の煤け、にじられ、挙句には傷に塗る薬もろくにないまま剣を振るう姿には心を突き動かされる。
彼の負った傷は果てしなく深いものだ。
だが、そこに「愛」という薬を垂らした時――世界は急転する。
苦しくて、愛おしくて、哀しい、そんな「ただひとりの少年」に物語はフォーカスされる。
題にもあるように、たしかに彼は奴隷だ。
人々の期待に動かれて、おのれの定められた運命に従うだけの「奴隷」だ。
けれども注目してほしいのはそこではない。
彼が、ひとりの少年が。
「勇者」として生きざるを得なかった彼が歩んだ、哀しく昏い、でも最上級に切ない物語を、ぜひご覧いただきたい。
読んで損はない作品です。