勇者だって人間なんだ! そして、魔族にだって……

 人間界に攻め入る魔族を倒す、それが選ばれし勇者の役目。
 桁外れの戦闘力と強靭な肉体を持ち、瞬く間に敵を一掃する。無敵の勇者クリストファーは、人々の尊敬と称賛を一身に集めていた。
 けれど、そんな彼の抱える悲哀を、葛藤を、孤独を、絶望を知るものはいない。ただ一人、彼女を除いては───

 勇者クリストファー、実は弱さを抱えるごく普通の人間です。深く苦悩しながら勇者としての振る舞いを続けているのも、その弱さ故でした。
 ようやく勇者としての責務を全うした彼に、手酷い裏切りが待っています。そして容赦なしに次の闘いへと踏み出すことになるのです。
 これが、辛い。そんな仕打ちがあるか! とキーボードを叩き壊したくなる衝動に駆られます。彼が「知っていたさ」とばかりに嘯く様子がまた悲しくて。
 しかし、そんな彼に運命の出会いが。束の間のささやかな幸せを噛み締めます。心の底に葛藤を隠したまま………

 そして、最後の戦いへ。


 華麗な戦闘シーンは必見、特に最後の戦いは壮絶に美しい。
 とても悲しく恐ろしい物語です。結末の残酷さに、たまらなくやるせない気持ちにさせられます。
 多くの方に読んでほしい作品。号泣覚悟でどうぞ。